プレーオフ切符確保したB2ベルテックス静岡…昇格1年目の躍進を担当記者が振り返る

スポーツ報知
リーグ最終戦の敵地・福岡戦でプレーオフ切符をつかみ喜ぶベルテックス静岡の選手たち

 B2ベルテックス静岡が昇格1年目のシーズンを終えた。プレーオフ(PO)準々決勝で東地区VのA千葉に屈したものの、一時は借金8を抱えながら残り12戦を9勝3敗で乗り切り、リーグ最終戦でPO切符を確保した。ホーム戦では1試合平均の目標入場者数2000人を超える2096人を集めて県内バスケファンを大いに盛り上げたチームを、塩沢記者が「見た」で総括した。

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  期待以上の結果だった。シーズン前はよくてB2残留と思っていたベルテックス静岡が、昇格1年目でPO進出の快挙だ。「目標はPO出場」としていた加納誠也主将(35)も、「期待半分、不安半分だった」と、全日程終了後、正直な胸の内を明かしてくれた。

 4年目のファクンド・ミュラーHC(50)の戦術が浸透していたのが一番の要因だ。A千葉以外の12チームから勝利を挙げた。連敗も5が最大、計60試合で29勝31敗と大崩れしなかった。同時にB3から昇格した岩手が20勝40敗と苦しみ1年で降格が決定したのとは対照的だった。

 ディフェンス中心のバスケを基本に攻撃では人とボールが連動。どこからでも3点シュートが打てる選手をそろえた。HCのバスケを心得る既存の戦力にトーマス・ブロープレー(32)ら得点力の高い新たなピースを加え、B2仕様に仕上げた。左肩負傷で前半思うようなプレーができなかった橋本尚明(31)やけがで出遅れた大塚勇人(34)の移籍組がフィットするのにやや時間はかかったが、終盤に存在感を示して逆転PO進出に貢献した。

 MVPを挙げるならジョン・ハーラー(24)だろう。司令塔・岡田雄三(28)、加納とともにPOを含め、全62試合に出場した。課題だったリバウンドの補強で加入させた205センチのセンターが、攻撃でも貢献。リバウンドはリーグ2位の1試合平均10・9本。得点でもチーム3位の14・2点を挙げた。

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 快進撃の陰にバックアップ体制が欠かせなかった。今季は専任トレーナーを2人から3人に増やした。麻生卓志GM(48)は「B2はプレーの強度が高くなるし、水曜開催が入って日程がハードになるから」と、導入の意図を説明。阿部拓馬ヘッドトレーナー(41)も「B2で3人体制は聞かない。選手一人一人に時間をかけられたのは良かった」と、効果を訴えた。大きな故障者を出さずに、8か月の長丁場を乗りきった。

 現場のコーチが1人増えたのも大きい。昨季限りで現役引退した大石慎之介アシスタントコーチ(AC、36)がスタッフ入りし、HCの下、ACが2人体制となった。自主トレでは直接指導し、細かい動きをチェック。今季からリーグ中のプレー映像を選手ごとに作成。可視化し、修正しやすいように工夫した。

 来季は、さらなる飛躍が期待される。だが、大石ACは「もっと厳しくなる」と、予想。「PO進出が最低ラインに見られるし、他チームからの見方も変わる」と、指摘した。今季は25歳以下の日本人選手のプレー機会が少なく、将来を担う若手育成も欠かせない事案だ。確かな足跡を残したこの1年の経験をどう近未来につなげるか。24―25年シーズンはベルテにとって大事なシーズンになる。

(塩沢 武士)

 ◆バスケットボール◇代表合宿 日本協会は8日、日本代表の強化を目的とした若手中心の「2024年度 男子日本代表チーム第1次強化合宿」参加メンバー22人を発表。ベルテックス静岡の市川真人(22)=静岡学園高出=が選出された。合宿は20から30日まで。

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