巨人小林「まさか、打てるとは思っていなかったです」3年ぶりの1号で3連勝

スポーツ報知
好リードと貴重な一発でチームを勝利に導いた小林は最高の笑顔で球場を引き揚げる(カメラ・宮崎 亮太)

◆JERA セ・リーグ ヤクルト1―2巨人(10日・神宮)

 巨人がヤクルトを下し、3連勝で貯金3とした。1点リードの7回には小林誠司捕手(34)が21年以来、3年ぶりとなる1号ソロ。値千金の一振りが、1点差の逃げ切りにつながった。初回2死からは吉川尚輝内野手(29)が右越えに先制1号ソロを放ち、前回対戦で完封を許したヤフーレに2発でお返し。先発の戸郷翔征投手(24)は、強力打線を相手に7回1安打無失点の快投で3勝目を挙げた。阪神が勝ったため首位浮上は逃したが、0・5ゲーム差をキープした。

 忘れかけていた感触が両手に広がった。小林は左翼スタンドの大歓声を受けて一塁ベース付近で速度を緩める。間違いなく、ホームランだ。それでも二塁ベースを過ぎたところでまた、着弾した左中間を振り返った。

 「まさか、打てるとは思っていなかったです」

 1―0の7回1死、フルカウントからヤフーレの甘く入った145キロチェンジアップを力感なく振り抜いた。21年9月12日の広島戦(マツダ)以来、実に971日ぶりの一発だ。「チーム全員、何より戸郷が頑張ってくれていた。最高の結果になって良かった」。お祭り騒ぎとなったベンチに戻ると、笑顔で手荒い祝福に身をゆだねた。驚きの表情を浮かべた阿部監督は「バットを持っているんだよ」と、独特の言い回しでたたえた。2年間不発でも侮るなかれ―。これがプロ通算16号だった。

 ベンチが“年イチ”とも言える盛り上がりを見せたのは、アーチが珍しかったからではない。昨季は21試合で1安打にとどまり「チャンスは多くない」と背水で臨む今季。試合後もウェートトレなどに励み、球場を後にするのは最後だ。「そういう(ホームラン)打者じゃないんで、粘って後ろにつなげられるように」と上半身を脱力した右方向中心の新打法にも挑戦している。その姿を見てきた矢野打撃コーチは「今年にかける思いがすごく強いと思う。その結晶としてホームランが生まれて、うれしかった」とベンチの最前列の手すりをたたき、喜びを表現した。

 開幕からスタメンマスクを分け合ってきた大城卓と岸田は定位置を争う存在。それでも「ライバルとはいえ、チームメート。出た時にそれぞれがいい結果を出せるように準備ができたら」と互いに投手の投球内容などを共有してきた。4日の阪神戦(東京D)では、7回に自身の代打として打席に向かう大城卓へ「頼んだ」と腰をたたいて送り出した。その大城卓が8日に不振で2軍降格した。

 「卓三が帰ってくるまで、僕らで一生懸命頑張るだけなので。帰ってきたときにはあいつも、しっかり頑張ってくれると思います」

 チームは5投手の継投で逃げ切り3連勝。これで小林が先発マスクをかぶった試合は8勝3敗2分け、勝率7割3分となった。「試合に出させてもらった以上は全力で一生懸命やるだけ。そういう姿を見てもらえたらうれしいですし、感謝の気持ちを持って、また頑張りたい」。捕手陣の長兄が巨人のホームベースを守る。(内田 拓希)

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