キョン目撃に茨城県が報奨金 特定外来生物の繁殖防止へ 監視強化、月内にも制度化

特定外来生物「キョン」(環境省提供)

千葉県で食害が深刻化するシカ科の特定外来生物「キョン」が茨城県で繁殖するのを防ぐため、県は目撃情報に報奨金を支払う制度を新設する。繁殖してしまうと農作物被害や生態系に害を及ぼす可能性があり、県はキョンへの監視体制を強化する。報奨金を出す条件や金額などを詰め、早ければ今月中にも制度開始を目指している。

県によると、報奨金は県内でキョンについて有力な目撃情報を寄せた人に支払う。情報提供の際に、日時や目撃した場所が県内だと分かる写真や映像などが必要となる。報奨金の条件や金額は決まり次第、県のホームページなどで公表する。

キョンは中国や台湾などが原産で、国内では千葉・房総半島や東京・伊豆大島に分布し、国が特定外来生物に指定している。基本的には単独行動をし、雌は生後約6カ月から繁殖が可能となる。

千葉県で爆発的に増え、2022年度の推定生息数は約7万1500頭に上る。同県によると、キョンは繁殖力が強く、捕獲して対策を講じても、増加数に追い付いていない現状だという。

茨城県で初めてキョンが確認されたのは17年の神栖市。以降、22~23年にかけて石岡、筑西、下妻の3市で相次ぎ確認された。

4頭は全て雄。神栖と下妻では車にひかれて死亡した状態で見つかり、石岡と筑西では生存が確認された。県によると、雄のキョンは縄張り意識が強く「隣接県にいた雄が流れてきたのではないか」と推測する。

これまで、県は市町村と連携し、狩猟者や県民に向け、キョンの写真を掲載したチラシを活用して情報提供を呼びかけてきた。さらに4月、市町村に委ねている有害鳥獣の捕獲許可権限の対象にキョンを追加。捕獲許可申請を各市町村の窓口で可能とした。

現在のところ県内で雌は確認されていないが、キョンの繁殖力の高さに県は危機感を強める。生息域を把握して監視体制を強化するため、県環境政策課の担当者は「県だけでは限界がある。県民や狩猟者の力を借り、一丸となって対策を進めていきたい」と話した。

カメラに写ったキョンとみられる個体=石岡市上曽、県猟友会石岡支部会員提供

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