解散総選挙なら自民大敗「衝撃の予想議席数」…政局マニア岸田総理が上川「うまずして」発言の揚げ足を取るしかない理由

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多くの有権者から政権交代を望む声が上がる中、岸田総理がそれでも衆院解散・総選挙に打って出る可能性は現時点でどの程度か?その場合、各陣営の議席数はどう変化するか?米国在住作家の冷泉彰彦氏が、直近の政局分析をもとに予想する。一方、解散は当面できないと情勢判断した場合、岸田総理にとっては自身の延命と保身が課題に。そこで注目されるのが上川外相の「うまずして」発言だ。自民党内で麻生氏を牽制したい岸田氏の“秘策”を探る。(メルマガ『冷泉彰彦のプリンストン通信』より)
※本記事のタイトル・見出しはMAG2NEWS編集部によるものです/原題:日本の政局を考える

ポイント1:自民の派閥や裏金は嫌われても、地盤は維持される

あまりバラバラに考えても仕方がないので、今回は現時点(2024年5月20日時点)での日本の政局について考えてみます。具体的には、解散総選挙の可能性と、その場合の結果の予想、そして当面描けるシナリオという順で議論してみましょう。

まず、全体を考える上での留意点を3つ確認しておきたいと思います。

1つ目としては、当分の間は自由民主党という看板、そしてそのサブブランドとしての旧清和会安倍派とか、志帥会二階派という名前、あるいは裏金議員といった名指しは、有権者からは強く嫌われるでしょう。

ただ同時に、この裏金問題の本質である、地方組織のタカリという問題、つまり宴席でのオゴリから冠婚葬祭、観劇や桜を見る的なイベントに至る「地盤側」の収賄構造が暴かれることもないのだと思います。

ということは、裏金議員たち本人は強烈な被害者意識と居直りの姿勢を維持、一方で問題の本質を突いた改革もなしということで進むと思います。

【関連】日本人が知らない自民党議員の大義と「被害者意識」なぜ彼らは世論をいとも容易く無視できるのか?

ポイント2:有権者は政権交代の意欲あり、ただし世代間で温度差も

2つ目は、これに対して有権者は「乗り換え意欲満々」という感じであることです。これは、細川内閣を誕生させた1993年や鳩山内閣を誕生させた2009年の総選挙時と類似の状況があります。選挙前の雰囲気ということでは、自民党に政権奪還をさせた2012年の選挙とも似ています。

どうして政権交代を期待しているのかというと、これはアメリカや欧州の選挙とはやや異なる事情があります。

まず、多くの有権者は現役世代か年金受給者です。現役世代の中で終身雇用が保証されている層は、政策の変更により解雇されるとか構造不況業種に陥るという危険よりは、雇用先で出世できるかという組織内の「政治」のほうが直接の利害に繋がります。そのため、選挙での「浮気」が可能です。

年金世代も収入はほぼ確定していますので、こちらも投票行動には自由度があります(物価問題は別ですが)。この間、自民党は年金世代の利害を意識した政策を採ってきましたが、だからといって年金世代が恩義を感じているとは限りません。

一方で、もしかしたら政策で大きく利害が変わるかもしれない非正規雇用の若年層などは、集結する政党もイデオロギーも持たないし、そもそも政治への期待値が低いので投票率は低く、今後も低いままと考えられます。

状況の変化という問題もあります。93年や90年と比較すると、人口問題も、財政もかなり行き詰まっており、政策の自由度の幅は狭まっています。ということは、本当は「まとも」な政党に入れないといけないという心理になるはずですが、もしかしたら政策の幅が狭いという感覚があるのなら、かえって自由度が高いと思う層もありそうです。

ポイント3:円安・物価高が大胆な投票行動を招く可能性

3番目は、単に裏金問題による自民党への怒りや反発というだけでなく、一向に回復しない日本経済、そして下がり続ける円と上がり続ける物価という状況の中で、「不連続な変化」を期待する心理はありそうです。ということは、より大胆な投票行動へ動くような深層心理もあるかもしれません。

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