築100年の石倉の扉の先には…まるでコンサートホールなピアノ教室 「音が響く」と生徒の評判に

金属製の扉の先に広がるピアノ教室=鹿児島市住吉町の「薩摩運輸」倉庫

 鹿児島市住吉町で空き倉庫になっていた石造りの建物が、ピアノ教室に生まれ変わった。築後1世紀以上と歴史の重みを感じさせる重厚な石壁は音の反響がよく、紫原の自宅でも教える上之段祐佳さん(41)は「まるでコンサートホールのよう」と満足げ。生徒の評判も上々で「こんな所を使えるなんて」と喜んでいる。

 倉庫は1916年に建造。広さ約109平方メートルで大正から昭和にかけて穀物貯蔵庫として活用されていた。しかし、時代の流れとともに本来の役割を終え、長年空き倉庫となっていた。

 このため、倉庫を管理する薩摩倉庫運輸の岩男秀彦代表取締役(93)が「歴史ある建物がこのままでは忍びない。防音性や耐湿性にも優れた石造りを生かせないか」と改修を決意。妻の彩子さんが上之段さんにピアノを習っていたことが縁で、2016年に一部を音楽室にリノベーションした。その後、上之段さんに貸し出すことになった。

 教室には現在、週に数回、主に小中学生が習いに来る。2歳からピアノを習う坂元小学校5年、吉永華音さんは「天井が高くて自宅で演奏するより音が響いて楽しい。音のイメージもわかりやすい」とお気に入りの様子だった。

 板張りの内装で、天井は石造りを生かした吹き抜け。「こんなところを使っていいのと思うほどすてきな場所」と上之段さん。コンサートホールの感覚に近いため、「音を分析する力を育てることにもつなげられる。こんなにピアノにぴったりとは」と話している。

 岩男さんは、倉庫のピアノ教室以外のスペースについても「地域に開かれた場所になるよう日々思案している。これからも愛される場所であり続けてほしい」と語った。

広々とした空間のピアノ教室=鹿児島市住吉町の「薩摩運輸」倉庫
鹿児島市住吉町の「薩摩倉庫運輸」倉庫の外観

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