鹿児島市山下町に昭和初期に建てられた鉄筋コンクリート建築物「鹿児島県教育会館」が現地で保存される見込みとなったことが8日分かった。所有する県教育会館維持財団が、可能な限り長く建物を維持、活用することを条件に売却する予定で、5月の大型連休前までに5団体が見学に訪れた。財団は「即取り壊しをする相手には売却しない。街のシンボルとして残す判断をした」としている。
県教育会館を巡っては当初、国登録有形文化財の旧藤武邸(春日町)を解体し、跡地に新たな建物を造って移転する方針だった。しかし計画を知った市民団体からの保存活用の要望を受け、リース業の平和リース(南栄2丁目)に売却した。会館もこれまで取り壊しが取り沙汰されてきたが、財団の今回の判断で、地域の歴史を伝える建築物とされる旧藤武邸と会館いずれもが現地で保存される可能性が高まった。
同財団などによると、現在の会館は1931(昭和6)年の完成で、鉄筋コンクリート造りの地下1階地上3階建て。中央公園に隣接している。戦時中に空襲で焼け野原となった同市街地では、戦前の建築様式を伝える貴重な建物となっている一方で、老朽化が進んでいた。
会館と敷地の販売価格は4億円以上。駐車場などとして使われている城山町の土地と合わせて計7億円以上で売却を予定する。また財団は下竜尾町に、鉄骨5階建ての新会館(延べ床面積1987平方メートル)を建設する。近く着工し、2025年3月末の完成を見込む。現会館に入る県教職員組合や県民教育文化研究所の7団体がそのまま移る。
財団は旧藤武邸の売却費を移転地の土地購入などに充当し、新会館の建築費用には、会館や敷地の売却費などを充てる計画。原園正敏常務理事(61)は「現段階では、会館は貴重な建物として現地に残す形で売却する判断をした。長く活用してもらいたい」と話した。