福永博之先生に聞く信用取引入門
【信用取引入門】第8回:信用取引の活用2(資金不足をレバレッジでカバーする)
【福永博之先生に聞く信用取引入門】
前回記事はこちら 第7回:信用取引の活用1(買いのタイミングを逃さない)
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信用取引を活用するメリットは、少ない保証金で大きな金額の投資が可能となるレバレッジを活用できるところにあります。
例えば、投資したい銘柄があっても投資資金が足りなければその銘柄の現物株を買うことができませんが、信用取引を活用すると、現物株を買う資金が不足していてもレバレッジを効かせて買いたい銘柄を買うことができるようになります。
また、レバレッジを効かせることで銘柄数や株数を多く買うことも可能です。
それでは具体的に活用例を見てみましょう。
これらは東証プライム市場の売買代金上位によく出てくる銘柄です。
銘柄名 (証券コード) |
終値 (4月25日現在) |
売買単位 | 最低投資金額 |
キーエンス(6861) | 64,580円 | 100株 | 645.8万円 |
ディスコ(6146) | 47,080円 | 100株 | 470.8万円 |
レーザーテック(6920) | 33,360円 | 100株 | 333.6万円 |
東京エレクトロン(8035) | 33,600円 | 100株 | 336万円 |
日立製作所(6501) | 13,235円 | 100株 | 132.35万円 |
ソニーグループ(6758) | 12,760円 | 100株 | 127.6万円 |
上記の中では最も価格が安いソニーグループでも現物株を買う場合には12,760円×100株=127万6,000円の資金(手数料などの諸経費を除く)が必要になります。
しかし、信用取引を活用すれば、127万6,000円×30%=38万2,800≒約40万円の手元資金で買うことができます。
また仮に手元に200万円ほどの資金がある場合なら、信用取引を活用することで、200万円÷30%=666万円までの銘柄に投資できることになりますから、ソニーグループ以外の売買代金上位銘柄にも投資することが可能であり銘柄の選択肢が広がります。
さらに、複数銘柄に投資したい場合も信用取引のレバレッジを活用することで投資が可能になります。
例えば、100万円の投資資金が手元にあり、いくつかの銘柄に投資したいと考えた場合はどうでしょう。ここでも具体的に見てみたいと思います。今度は売買高の上位によく出てくる銘柄です。
銘柄名 (証券コード) |
終値 (4月25日現在) |
売買単位 | 最低投資金額 |
トヨタ自動車(7203) | 3,497円 | 100株 | 349,700円 |
三菱UFJFG(8306) | 1,551.5円 | 100株 | 155,150円 |
三菱重工業(7011) | 1,328円 | 100株 | 132,800円 |
東京電力HD(9501) | 979円 | 100株 | 97,900円 |
日産自動車(7201) | 546.7円 | 100株 | 54,670円 |
NTT(9432) | 169.4円 | 100株 | 16,940円 |
これらの銘柄の最低投資金額は2万円未満から30万円台まで様々ですが、この中から複数銘柄に投資したいと考えた場合を想定してみます。
仮に30万円が手元にあれば、信用取引のレバレッジを活用して100万円まで投資可能ですので複数の銘柄への投資が可能になります。
ここに取り上げた銘柄の組み合わせで考えますと、トヨタ自動車(34万9,700円)、三菱UFJFG(15万5,150円)及び三菱重工業(13万2,800円)の株をそれぞれ最低投資単位である100株分購入したとしても、全額で637,650円(手数料など諸経費を除く)となり、30万円の資金で3銘柄に同時に投資することが可能になることが分かります。
また、株数を多く買うことも可能になります。例えば30万円の資金で、三菱重工業の現物株を購入する場合には、30万円÷4月25日終値1,328円=225.9株となり、200株までしか買えません。しかし、信用取引を活用した場合は100万円まで投資可能ですので100万円÷4月25日終値1,328円=753株となり、700株まで買うことが可能になります。ここでは現物株投資よりも株数を多く投資できるという選択肢が増えることになります。
このように買いたい場面で信用取引のレバレッジを活用すると、投資額が増えることから複数銘柄に投資することができるだけでなく、株数も多く買うことができるようになり、より効率的な資金の活用と大きなリターンが期待できるようになるため、利用する価値があると考えられるわけです。
ただし注意も必要です。なぜなら、レバレッジを効かせて取引を行った場合、現物取引より大きなリターンが期待できる反面、価格変動による損失額が大きくなることも考えられるからです。
そのため、信用取引を活用する際は、保証金に余裕をもって取引を行うことが重要です。
さらに、「信用取引入門第4回のリスク管理」で解説したことをよく理解するとともに、損失が発生したり、拡大したりしないよう注意して取引を行うようにしましょう。
【第9回】はこちら
日本テクニカルアナリスト協会・前副理事長
勧角証券(現みずほ証券)を経て、DLJdirectSFG証券(現楽天証券)に入社。同社経済研究所チーフストラテジストを経て、現在、投資教育サイト「itrust(アイトラスト) by インベストラスト」を運営し、セミナー講師を務めるほか、ホームページで毎日マーケットコメントを発信。テレビ、ラジオでは、テレビ東京「モーニングサテライト」(不定期)、日経CNBC「昼エクスプレス」(月:隔週担当)、Tokyo MX「東京マーケットワイド」(火:午後担当)、ラジオ日経「ウイークエンド株」(有料番組)、「マーケットプレス」(金:午後隔週担当)、「スマートトレーダーPLUS」(木:16時~16時30分放送)などにレギュラー出演中。また、四季報オンラインやダイヤモンドZAIなどのマネー雑誌にも連載を持つ。著書には「テクニカル分析 最強の組み合わせ術」2018年6月発売(日本経済新聞出版社)、「ど素人が読める株価チャートの本」(翔泳社)などがあり、それぞれ台湾で翻訳出版され大好評。テクニカル指標の特許「注意喚起シグナル」を取得、オリジナルで開発した投資&ビジネスメモツールi-tool(アイツール)を提供中。