福井洞窟

 福井洞窟は佐世保市吉井町を縦断する県道のそばにある。奥行きは5メートルほどしかないが、大きな岩が屋根のように日差しを遮り、中に入ると涼しく感じる。旧石器時代から縄文時代にかけて、人々の生活の場となっていた▲佐世保市は洞窟遺跡の数が全国で最も多い。川で削られやすい砂岩の地質と、平野が少ない環境の中で、当時の人々が川筋に沿って行動していたことなどが要因という▲全国約740のうち36の遺跡がある。国指定の史跡になっている福井洞窟もその一つで、少なくとも1万9千年前から1万年前にかけて活用されていた痕跡がある▲2012、13年に行われた発掘調査では、旧石器時代の洞窟遺跡としては国内初となる炉跡が見つかった▲はるか昔の生活を想像するのは難しいが、理解の手助けをしてくれるのが福井洞窟ミュージアム。洞窟のジオラマや、発掘現場から移設した高さ6メートルの土層の断面などがあり、現場の雰囲気を感じることができる。オープンして4年目。今月、入館者が5万人を超えた▲館内を見学すると、雨露をしのぎ、火を起こしていた“祖先”の姿がよみがえってくる。きっとサセボには快適な居住空間がたくさんあったのだろう。身近にある貴重な遺跡。一度足を運んで、太古への時間旅行を楽しんでみてはどうだろう。(永)

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