「被爆地の願いに逆行」米臨界前核実験 長崎県内の被爆者ら怒り

 米国の臨界前核実験実施を受け、長崎県内の被爆者らは18日、「被爆地の願いに逆行する」「国際社会の緊張を高めるだけ」などと怒りの声を上げた。
 被爆者4団体の一つ、長崎原爆被災者協議会(長崎被災協)の田中重光会長は「米国は核兵器を廃絶する考えが頭にないのだろう」と落胆を隠さない。核兵器は存在する限り使われる可能性があるとして「核兵器と人間は共存できない。CTBT(包括的核実験禁止条約)に抵触しないといっても絶対に許されない」と語気を強めた。
 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)の吉田文彦センター長は今回の実験によって、緊張関係が続くロシアなどに「米国が核軍縮に本気ではないと解釈され、相手が核実験をする口実に使われかねない」と指摘。「米国はロシアなどに与える影響に一層神経を使うべきだ。核軍縮に向けて実験回数を明確に減らし、なくす努力が必要だ」と強調した。
 長崎市の鈴木史朗市長と毎熊政直市議会議長は18日、バイデン大統領宛てに連名で抗議文を送付。ウクライナや中東など国際情勢が緊迫化する中、今回の実験は「核軍拡競争を助長し、被爆者や平和を希求する世界の人々の思いを踏みにじる行為で断じて許せない」と非難。核兵器の存続や開発につながる一切の実験の中止を求めた。大石賢吾知事、徳永達也県議会議長も在日米国大使館に抗議文を送った。
 旅行で初めて同市の長崎原爆資料館を訪れていた愛知県の西野福一さん(62)は、今回の実験を知り「核なき世界が一番だが、現実はあと50年たっても不可能では」と悲観的。しかし、資料館で「核兵器で罪のない多くの市民が命を奪われたと知った」として、「若者を含めて日本からも多くの人が核実験に反対しなければいけない」と語った。

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