米探査機、木星の3衛星に20年ぶり大接近へ 新発見の期待高まる

木星探査機ジュノーの軌道を変えつつ、ガニメデ、エウロパ、イオに接近

2021.02.04
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木星の周囲を42時間ごとに1周する衛星イオが、木星の雲に影を落としている。NASAの探査機ジュノーが撮影した画像。(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/SWRI/MSSS, KEVIN M. GILL)
木星の周囲を42時間ごとに1周する衛星イオが、木星の雲に影を落としている。NASAの探査機ジュノーが撮影した画像。(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/SWRI/MSSS, KEVIN M. GILL)
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 これから数年、私たちは木星やその衛星たちの新たな姿を目にすることができそうだ。2016年から木星を回り続けてきたNASAの探査機ジュノーが、今年で完了予定だった探査計画を拡張し、木星の衛星やリング(環)に接近して調査を続けることが決まった。(参考記事:「木星周回軌道から初の写真届く、探査機ジュノー」

 新たに決まったのは、2025年9月まで4年にわたり木星系(木星とその衛星の系)を42回周回する旅。ジュノーは過酷な環境に突入することになるが、地球でこの探査機をサポートする研究者チームは、ジュノーが何を見つけ出すか心待ちにしている。

「ワクワクしています。ジュノーを、木星だけを観察する周回機から、木星系を調査する探査機に移行させるというのは、画期的なアイデアでした」と、ジュノーの主任研究員である米サウスウエスト研究所のスコット・ボルトン氏は語る。

衛星ガニメデ、エウロパ、イオへ

 ジュノーはこれまでの軌道の周期を徐々に短くしながら、木星の衛星の中でも注目されている3衛星へと近づいていく。

 まず2021年6月には、太陽系最大の衛星であるガニメデのそばを通過する。そして2022年には、生命の存在が期待されているエウロパに接近。さらには硫黄の霜が降り積もり、激しい火山活動が続く衛星イオへと近づく予定だ。

 2003年に探査機ガリレオのミッションが終了して以来、ほぼ20年ぶりにこれらの衛星を間近に見られることは、外太陽系(木星やその外側に広がる太陽系)の氷の世界を研究する科学者たちにとってはこれ以上ないプレゼントだ。

「いつも、 #PlanetsAreOverrated (惑星は過大評価されている)というハッシュタグをトレンドに入れようと、がんばっています」と語るのは、惑星科学研究所でイオを研究するジュリー・ラスバン氏だ。「衛星の方が惑星よりも、ずっとおもしろいですから」

 今回、木星の3つの衛星を調査することに加えて、ジュノーは木星の環を幾度か通過して詳しく観測する。土星の環と違って木星の環は希薄で、詳細はほとんどわかっていない。

「太陽から離れた外太陽系を調べるミッションはほとんどなく、木星探査機ジュノーを活用できるというのはまたとないチャンスです」と、米ジェット推進研究所で外太陽系の氷に覆われた衛星を研究するシンシア・フィリップス氏は言う。「これはまったく新しいミッションと言っても過言ではありません」

参考記事:ジュノーが撮った木星画像集(写真クリックで該当記事へ)
参考記事:ジュノーが撮った木星画像集(写真クリックで該当記事へ)
木星表面の謎の黒点をとらえた新しいカラー強調画像からは、渦巻く嵐の大集団が見えてきた。(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL-CALTECH/SWRI/MSSS/ROMAN TKACHENKO)

次ページ:探査機ジュノーのこれまで

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