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シャープが液晶大幅縮小、経営資源「選択と集中」も実効性は不透明

シャープが液晶大幅縮小、経営資源「選択と集中」も実効性は不透明

構造改革に取り組むシャープ(左)と堺ディスプレイプロダクト(SDP)

シャープは14日、液晶ディスプレー事業と半導体などの電子デバイス事業を大幅に縮小すると発表した。競争力の維持に多額の投資が必要なため、規模を落とし、家電や複合機などのブランド事業に経営資源を振り分ける「選択と集中」を進める。構造改革を通じて人工知能(AI)や次世代通信などの分野で成長を目指す方針を示した。一方で具体的な投資額や時期などは見えておらず、実効性は不透明だ。(大阪・森下晃行)

シャープの業績

大型液晶パネル生産子会社の堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市堺区)の稼働停止を発表した。従業員に対する希望退職の募集も検討する。同社の生産設備は今後、他社に供与するほか、建屋をデータセンター向けに活用することも選択肢にあるという。

SDPはこれまで、生産を縮小しつつ中国・韓国メーカー向けに供給してきたが、稼働率が低下し採算が悪化していた。中小型も市況が厳しく収益の確保に苦戦していた。

14日の会見でシャープの呉柏勲社長は「過去2年間で(市況などに)非常に大きな変化があり、対応が足りなかった」と述べた。大型液晶の国内生産は撤退し、中小型は固定費を削減する。「売り上げ規模に見合った生産能力の縮小などを進め、赤字幅の縮小に取り組む」(呉社長)。

カメラモジュールや半導体を手がける電子デバイス事業も将来的に譲渡する方針だ。同事業は近年、減収営業減益傾向にあり、時期を見て撤退する。

液晶・電子デバイス事業は継続的な投資が必要だが、シャープが台湾・鴻海精密工業の傘下に入ってからは十分な投資ができておらず、成長分野の開拓が進まない“負のサイクル”に陥っていた。

シャープの2024年3月期連結業績において、液晶・デバイス事業は売上高の約44%を占める。またデバイス事業は主要5事業のうち3番目に営業利益を稼いでおり、事業ポートフォリオが大きく変わることになる。呉社長は「持続的な収益構造の確立が喫緊の課題だ」と説明する。

同日発表した中期経営計画では24年度を構造改革の年とし、25年度以降に成長を目指す方針を示した。具体的には、ブランド事業のうち家電とAIの組み合わせやクロスリアリティー(XR)技術、車載機器などで稼ぐ。

加えて新分野としてAIや電気自動車(EV)なども掲げ、鴻海精密工業と協力して「イノベーションを生み出す」(呉社長)。

ただ、成長分野にどの程度投資を振り分けるかといった具体的な計画は明らかにしていない。競争力の源泉となる投資の原資をどこから捻出するかも不透明だ。中計では売上高や営業利益などの重要経営指標(KPI)も示されておらず、実効性には疑問が残る。


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日刊工業新聞 2024年5月15日

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