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藤井聡太、秒読みには「経験と直感力で対応」。居飛車vs振り飛車“頂上決戦”で見せた

居飛車vs振り飛車のトップ対局

(写真左)菅井竜也七段、藤井聡太JT杯覇者

 JT杯覇者(前回優勝者)と、2022年2月28日時点の将棋の公式戦タイトルホルダー(竜王/名人/王位/王座/棋王/叡王/王将/棋聖)および2022年賞金ランキング上位者を合わせたトップ棋士12名が出場できる「将棋日本シリーズJTプロ公式戦(以下、JTプロ公式戦)」。9月9日に開催された2回戦第2局の熊本大会で、藤井聡太JT杯覇者(竜王・名人・王位・棋王・叡王・王将・棋聖)vs菅井竜也八段という、現代における居飛車vs振り飛車のトップ対局が実現した。  通算成績337勝68敗(勝率8割3分2厘、対局前)でタイトル獲得17期の藤井と、通算成績397勝188敗(勝率6割7分9厘、対局前)でタイトル獲得1期(王位)の菅井は本年度の叡王戦でも番勝負を戦っており、熱戦を繰り広げたばかりだ。  対局前日には両対局者による熊本県知事への表敬訪問も行われ、蒲島郁夫知事、熊本のPRキャラクター「くまモン」の出迎えを受けた。蒲島知事は「県内初の女流棋士が誕生し、県内初の小学生名人も生まれるなど、熊本では将棋熱が高まっている」ことを紹介。両対局者にエールを送った。

振り飛車党第一人者の沽券をかけた戦い

 対局前の両者のコメントは以下のとおり。  藤井聡太JT杯覇者「熊本は今回初めて来ました。九州新幹線に乗りましたし、先程リアルくまモンに会えて感激しました(笑)。『JTプロ公式戦』は時間の短い棋戦なので、集中することが大事で、決断も求められます。菅井八段は切れ味鋭い振り飛車党で、早指しも得意なイメージがあります。観戦いただくみなさんに楽しんでいただけるよう頑張ります。」  菅井竜也八段「熊本は数年前に将棋合宿に指導棋士として来たことがあります。私も今回くまモンに会えて良かったです(笑)。藤井JT杯覇者には叡王戦で痛い目に遭わされました。そこから4カ月ほど経ってどこまで改善できているかということですね。今、振り飛車を指す棋士は多くはないのですが、振り飛車の良さを多くの人に知ってほしいという気持ちです。」  菅井が語るとおり、現在、将棋のトップ棋士で振り飛車党の棋士は少ない。実際、今期のJTプロ公式戦に出場する12名のうち、振り飛車党の棋士は菅井ただ一人。AI研究が全盛の棋界において、飛車を振ったとたんに評価値(AIによる形勢判断)が下がることも理由として大きいと思われるが、玉の囲いと別のサイドで戦う振り飛車戦法は、序盤の駒組みがわかりやすく、アマチュアの将棋ファンにとっては、依然として人気戦法であることは今も昔も変わらない。公開対局で行われる本棋戦。振り飛車党の第一人者として、ファンに自分の振り飛車を見てほしいという思いがひしひしと伝わった。

対局前夜の両棋士インタビュー

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過去の戦型は、すべて居飛車vs振り飛車の対抗形
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