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AIとモビリティで次世代社会をつくるソフトバンクがJapan Mobility Showで戦略説明

 「東京モーターショー」から名称を変更して4年ぶりに開催した「Japan Mobility Show(ジャパンモビリティショー)2023」。自動車の最新技術などを紹介する展示会だが、名称だけでなく、電気自動車(EV)や空飛ぶクルマといった次世代の車が登場し、展示内容も様変わりした。その中で注目されるキーワードが、無人運転など人工知能(AI)を活用した「モビリティの自動化」だ。

 携帯電話などでネットワーク技術を持つソフトバンク(東京)は10月30日、企業や団体がさまざまなテーマでプレゼンテーションする「Japan Future Session」で「AIとモビリティが創る未来~ソフトバンクの次世代社会インフラ~」と題して最新技術の紹介と未来戦略をアピールした。

▽「コネクテッド」

 プレゼンにはソフトバンクの佃英幸・専務執行役員兼CTO(最高技術責任者)とグループ会社2社のトップが登壇。佃氏は自動運転車向けの通信技術について、実証実験の様子や将来展望について説明した。

佃英幸ソフトバンク専務執行役員。「AIによる人とモノが共生する社会を目指している」

 

 佃氏はAIを活用したモビリティについて「コネクテッド(つながっている)」が重要だとして事例を紹介した。自律走行する自動運転の車に歩行者が歩道から飛び出してきた場合、ネットワークを通じて周辺を走るほかの車にも急ブレーキを踏んだ情報が伝わることで「相互の車同士でタイミングを取りながら走行することができる」と話した。この技術を応用すれば「前の車のブレーキで後続の車が渋滞するようなことが減少する」とした。

歩行者の飛び出しに急ブレーキ。一つの車への情報伝達だけでなく、全体が協調することが重要だという

 


▽膨大なデータ処理が不可欠

 また、自動運転の車が交差点で右折する際に「見えているものだけではなく、離れて見えないところから現れる車などがないかという情報をネットワーク経由で得ることによって安全に曲がることができる」と説明した。

 佃氏はAI社会になると膨大なデータが発生し、そのデータ処理が必要になるとして、大規模なデータセンター構築を進めていることを明らかにした上で「モビリティだけでなく、『人・モノ・AI』がつながる社会が実現する」と強調した。

▽「横に動くエレベーター」

「自動運転バスはお金がかかるのではという人もいるが、さまざまな経済効果がある」と話すBOLDLYの佐治友基社長

 

 ソフトバンクグループでシステム開発を手がけているBOLDLY(ボードリー)の佐治友基社長兼CEO(最高経営責任者)は、自動運転バスが既に実用化している事例を紹介した。約130回の実証実験を経て、茨城県境町、愛知県日進市、北海道上士幌町、東京・羽田の4地域で現在、6台が日常的に運行しており「今年度中には26台になる」と説明。「自動運転バスは特別なものではなく『横に動くエレベーター』。2030年には1万台を目指す」と力を込めた。

茨城県境町で運行している自動運転バス。「免許返納者や子育て世代など利用者は多い」という

 

▽医療MaaSが拡大

 モビリティサービスを提供するMONET(モネ) Technologiesの清水繁宏社長兼CEOは、行政や医療などのサービスが移動する「MaaS(Mobility as a Service)」の事例を紹介。患者宅近くの車両から医師や看護師が検査や診察をする従来の訪問診療のようなサービスが進んでいるとした。今では遠隔聴診器やポータブルエコーといった機器も搭載。「導入自治体が拡大している」と話した。

「医療とモビリティの掛け合わせで社会課題を解決するサービス」と医療MaaSについて説明するMONET Technologiesの清水繁宏社長
長野県伊那市ではオンラインで医師と連携、看護師を乗せた車両が運行しているという

 

 最後に佃ソフトバンク専務執行役員は「一企業だけではなく、規制緩和など政府の理解も必要。オールジャパンで取り組めば、2030年にはある程度のAIを活用したモビリティ社会が実現できる」と強調した。自動運転など夢とされていたAIと共存するモビリティ社会が、そう遠くない将来に訪れるかもしれない。

「Japan Mobility Show 2023」会場の東京ビッグサイトでは、自動車メーカーの次世代カーだけでなく、モビリティに関する生活関連の展示も多く見られた(東京都江東区)