中国自動車企業のプレゼンス高まる=日本車、中国IT大手と提携―世界最大の北京モーターショー

八牧浩行    2024年5月1日(水) 8時0分

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世界最大の自動車展示会「北京モーターショー」が4月25日、4年ぶりに開幕した。

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世界最大の自動車展示会「北京モーターショー」が4月25日、4年ぶりに開幕した。会期は5月4日まで。世界の自動車や部品メーカーなど約1500社が出展。278車種の電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)などが展示され、活況を呈している。比亜迪BYD)をはじめとする中国メーカーはEVに力を入れ、IT技術で他を圧倒している。

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中国では23年にEVの販売台数が前年比2割増え、668万台を超えた。国際エネルギー機関(IEA)の予測では、中国のEV(PHVも含む)市場は30年に新車全体の3分の2を占め、35年には85%に達する見通し。中国政府の政策支援もあり、巨大EV大国として存在感は高まるばかりだ。

スマホ大手・小米、3年で参入、7万5000台販売

スマホ大手の小米(シャオミ)は3月に発表した低価格EVを7万5723台予約販売したと発表。わずか3年で新車を販売し、米テスラ車を下回る価格でEVに参入した。セダンEV「SU7」は車から家電を操作したり、スマホから車の一部機能を操作したりできるなど、「走るスマホ」を実現した。

中国国有大手の広州汽車集団が発表した新型EV「AION V」は、高精度地図に頼らない自動運転技術を搭載する。自動運転技術に高精度地図を使うことが多いが、利用範囲が狭い。全地球測位システム(GPS)や高性能センサー「LiDAR」を活用することで広範囲で先進的な自動運転が可能になるという。広州汽車は新型EVを7月に世界展開する。

華為技術(ファーウェイ)は奇瑞汽車や中堅の賽力斯集団(セレス・グループ)と共同でEVブランドを展開し、ファーウェイ独自のOSを搭載する。1~3月の中国市場の新エネルギー車の販売台数では、ファーウェイが協力する多目的スポーツ車「問界M7」が7万5000台となった。米テスラの「モデルY」(10万3000台)に次ぐ販売規模となった。中国消費者の人気を集める。

世界最大のEV市場である中国で、日本勢は精彩を欠く。中国汽車工業協会によると、中国メーカーのシェアが20年の38%から23年に56%まで躍進した一方、日本メーカーは23%から14%まで縮小した。

こうした中、日本車メーカー各社は反転攻勢に出る。トヨタホンダ日産自、マツダが出展。日産はEVやPHVで4車種の試作車を公表し、26年までに発売すると発表した。

中国メーカー各社は新車開発期間を従来の半分の2年程度に縮めて次々と投入。開発スピードで劣勢の日本勢は中国IT大手と提携する道を選択した。

トヨタは中国ITビジネスの巨人・腾讯控股(テンセント)とAI(人工知能)やクラウド、ビッグデータなど3分野で協力し、24年中に共同開発したサービスなどを搭載した車両を投入する。テンセントは自動車分野を成長領域と位置付けて強化しており、トヨタはEVのIT機能で先行する中国勢に対抗する。

中国はトヨタの世界販売の約2割を占める重要市場だが、22年度まで2年連続で減少し、23年度の販売台数も190万台で前年度比1%増にとどまった。中国勢が急伸する中、反転を狙う。

日産も中国ネット大手の百度(バイドゥ)と協業する。百度のAI技術を車室空間の設計やサービスなどに活用する。ホンダも車載ディスプレーでファーウェイと連携する。


日本企業、中国IT企業との提携で生き残り

日本の自動車メーカーが中国ITと組むのは、最大の自動車市場・中国を重要なマーケットと位置付けるからだ。日系自動車メーカーの在中国の幹部は「あらゆる方策を追求し、生き残れる方法を探りたい」と語る。

中国の自動車メーカーは日本企業からエンジン車に関する技術を学ぶ形で合弁会社をつくり、中国市場に商品を投入してきた。だが、EVへの世界的な潮流の中で、このパターンが逆転した格好だ。

中国市場を重視する姿勢は欧米メーカーも同様だ。ドイツのシュルツ首相は4月にフォルクスワーゲンなど独自動車企業トップを引き連れて訪中し、中国首脳らに売り込んだ。

一方、中国国内メーカーの生産能力の増大は市場需要の伸びを上回るペースで進んでいる。自動車各社や各地方政府の計画を合算した場合、25年の中国の新エネ車の生産能力は3600万台規模に達する見通し。25年の中国販売は1700万台前後のため、2000万台近くが余剰となる計算だ。

北京モーターショー

過剰生産・輸出攻勢で欧米とあつれきも

過剰生産問題を解消するため、中国メーカーは欧州や東南アジアなどへの輸出を強化している。23年の新エネ車の輸出台数は78%増の120万台だったが、25年は350万台規模に達する見通しだ。タイをはじめ東南アジア市場ではBYDなどが攻勢をかけている。

米欧でこの問題に対する警戒感が高まり、EUは中国製EVが補助金で安価に販売され、競争を阻害していないかを調査。米国もイエレン財務長官が4月に訪中し、過剰生産問題を話し合う枠組みの構築で合意した。

こうした中、米EV大手のテスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)は4月末、中国の李強首相と会談。「中国で電気自動車の発展を見るのは良いことだ。すべての車は将来電動化されるだろう」と指摘。マスク氏は「上海の巨大工場は中国チームのおかげで、テスラの工場の中で最も業績が良い」と明かし、「中国との協力関係の一層の深化」を求めた。李首相は「中国におけるテスラの成功は米中の経済協力の成功例だ」と述べ、中国の巨大市場はこれまで通り外資企業に開放されると強調した。

世界の自動車市場でのEV化の流れは紆余曲折があっても止まらない。巨大市場と技術革新を武器に中国自動車産業の快進撃は続きそうだ。

北京モーターショー

■筆者プロフィール:八牧浩行

1971年時事通信社入社。 編集局経済部記者、ロンドン特派員、経済部長、常務取締役編集局長等を歴任。この間、財界、大蔵省、日銀キャップを務めたほか、欧州、米国、アフリカ、中東、アジア諸国を取材。英国・サッチャー首相、中国・李鵬首相をはじめ多くの首脳と会見。東京都日中友好協会特任顧問。時事総合研究所客員研究員。著・共著に「中国危機ー巨大化するチャイナリスクに備えよ」「寡占支配」「外国為替ハンドブック」など。趣味はマラソン(フルマラソン12回完走=東京マラソン4回)、ヴァイオリン演奏。

※本コラムは筆者の個人的見解であり、RecordChinaの立場を代表するものではありません。

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