国営諫早湾干拓事業を巡り、政府は「基金によるかにかかわらず、有明海再生の取り組みを進める」とする答弁書を16日付で閣議決定した。佐賀を含む沿岸3県の漁業団体は総額100億円の基金創設を前提に、排水門を開門せずに有明海再生に取り組むという政府の方針に賛同した経緯があるが、基金への明言を避けた形となった。

 大串博志衆院議員(佐賀2区)の質問主意書に答えた。質問では、非開門を前提とする合理的な理由や、中長期の開門調査をしないで有明海再生が達成できるかどうかをただした。

 答弁書では、開門調査によらない有明海再生について、気候変動に伴う気温や水温の上昇、豪雨の影響が顕在化していることなどを理由に「現時点において具体的な見通しを示すことは困難」と説明を避けた。

 その上で「開門によらない有明海再生を目指すことが最良との考えの下、基金によるものか否かにかかわらず、有明海を豊かな海として再生させる取り組みを進める」とした。

 政府の見解に対し、大串氏は「有明海再生に向けた見通しがはっきりせず、無責任な答弁だ。漁業団体の皆さんは基金を前提に苦渋の決断をされたのに、それさえも不確実のように読み取れる」と批判した。(大橋諒)