『幸も不幸も最適量』ナナオは立派なユーチューバー(藤原七瀬)/KADOKAWA

 コロナ禍、自粛生活中まっただ中だったころにユーチューブを見るのが楽しみの一つだった。その中でも特によく見ていたのが著者のチャンネルだ。

 ユーチューバーとして活動する傍ら、小説家(名義・藤原七瀬)としての顔も持つ著者・ナナオさんによる初のエッセーだ。2019年に始動したユーチューブチャンネル『ナナオは立派なユーチューバー』の登録者数は現在66万人以上という人気を誇る。自分の身の回りで起きたことを語ったり、料理したりと多岐にわたる内容を動画で発信している。そんな彼は一体どのような人生を歩んできたのか。等身大の喜怒哀楽とともに、約205ページにわたってつづった。

 友達づくりや受験、家族のことから、少しユニークな推し活事情やお酒の失敗談…。どれも独特で濃い内容だが、その中から20代の著者が考えるさまざまな価値観が見えてくる。また、一話一話が短く、著者の高いトーク力が文章でも生かされているため、動画を見る感覚でさくさく読み進められる。

 ナナオさんは読者に向けて「自分なりに解釈し、影響を受けたことに責任を持てる大人になってくれることを祈る」とつづっている。まさに視野の広がりそうな一冊だ。(KADOKAWA/1650円)

(コンテンツ部・池田知恵)