国営諫早湾干拓事業(長崎県諫早市)を巡り、坂本哲志農林水産相が12日に佐賀、長崎の両県に出張する日程で調整していることが8日、関係者への取材で分かった。有明海再生に向けた取り組みのほか、潮受け堤防や干拓地の営農状況を視察する。

 関係者によると、坂本氏は12日に佐賀県有明水産振興センター(小城市芦刈町)を視察する。佐賀、長崎、熊本、福岡の4県漁業団体の関係者や山口祥義知事も出席する。その後、諫早湾干拓の潮受け堤防排水門の操作や、干拓地の営農状況も視察。11日は熊本県を訪れ、熊本地震からの復興状況を確認する。

 歴代農相は就任後、諫早湾干拓を視察し、両県知事や開門を求める漁業者らと意見交換することが通例となっていたが、前任の宮下一郎氏の視察は実現しなかった。坂本氏は昨年12月、政治資金パーティーの裏金を巡る問題で安倍派の閣僚が事実上更迭されたことを受けて農相に就いた。

 諫早湾干拓の開門問題を巡っては、佐賀県有明海漁協など佐賀、熊本、福岡の3県漁業団体が2月、開門せずに有明海再生に取り組む国の案に賛同する考えを坂本氏に伝達。漁業団体側は賛同の前提として、関連訴訟の中で国が示していた有明海再生のための総額100億円の基金創設を求めており、国の具体的な対応が焦点となっている。(取材班)