資産価値2億円の島根・知事公舎 宙に浮く活用策「法律と条令がハードル」 現在空き家、県・松江市とも案出ず

知事公舎の庭園

 空き家になっている島根県の知事公舎(松江市北堀町)の活用策が宙に浮いている。県庁内で案が出ず、提案を求められた松江市も具体策がまとまらず、回答期限を7月末に延長した。建築基準法と市の景観条例が壁になっており、着地点は見えていない。

 公舎は1986年に新築し、武家屋敷など歴史的建造物が集まる塩見縄手沿いに立地。庭園があり、資産価値は土地、建物を合わせ約2億円という。丸山達也知事は2019年の初当選後、松江市内に自宅を購入し、使っていない。老朽化が進み、年間約300万円の維持管理費がかかるため、県は今年3月末で廃止した。

 公舎周辺は「第一種中高層住居専用地域」と規定。建築基準法に基づき、住宅のほか、店舗や図書館、民泊施設などとして活用できる一方、旅館やホテルとしては使えないなど制限がある。市の景観条例では「伝統美観保存区域」に指定。周辺の街並みとの調和の観点から屋根や壁のデザインに規制がかかり、建物の高さも12メートル以下かつ3階建て以下との基準がある。

 県財産活用推進室の小谷慎室長は「法律と条例がハードルになっている」と説明し、市も同様の考えを示す。

 1月に県から提案を求められた市は期限だった4月19日までの回答を留保。上定昭仁市長は今月14日の定例会見で「現段階で進捗(しんちょく)はない。市民や観光客に使ってもらえるような施設になる可能性を検討している」と述べるにとどめ、買い取るかどうかを含めて具体策は見えてない。

 県は廃止した3月末に庭の管理などの業務委託と建物への電源供給を取りやめた。今後は県職員が草取りをするなど最低限の管理となる。建物の老朽化は時間とともに進むだけに、利活用が決まるまでの期間が長引けば、改修費用が増える可能性がある。

 県庁内で案が出ず、市に提案を求めた立場の丸山知事は、今月9日の定例会見で「象徴的な場所で活用しようとなれば安い金額ではない。(市の中で)検討する時間も必要だろう」と述べ、改めて市の返答を待つ姿勢を示した。市は現在、松江商工会議所に呼びかけるなどして検討しており、松浦徹理事は「一度回答を保留している。(7月末までに)市としての案は用意する」と説明する。

 仮に市からの提案がなければ、県は民間への売却を含めた検討に移る。

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