新書「世界はラテン語でできている」7万部超 栃木県出身のラテン語さん大反響 「身近さ、奥深さ届けたい」

「世界はラテン語でできている」の表紙

 栃木県出身のラテン語さん(31)の新書「世界はラテン語でできている」(SBクリエイティブ刊)が話題を呼んでいる。1月7日に発売され7刷、電子書籍も含め約7万7千部を売り上げた(5月14日現在)。2016年からX(旧ツイッター)で、ラテン語の魅力を発信し続けたのが目にとまり、出版につながった。「多くの人に読んでもらえて驚いている。魅力を伝え、ラテン語の学習者を増やしたい」と話す。

 ラテン語は古代ローマで用いられていた言語。仕事や生活で何げなく使う言葉には、ラテン語が元になったものがたくさんあるという。「由来を知ることにより、専門用語や新しい単語に身構えることなく接することができる」と強調する。

 ラテン語さんは東京外国語大外国語学部(英語専攻)卒。高校2年からラテン語を学び始めた。英単語の語源として頻繁に登場することに着目した。大好きな東京ディズニーリゾートの施設に、ラテン語の説明文が書かれていたこともきっかけだった。

 翻訳関係の会社に勤務する傍ら、現在もXへ投稿を続ける。新しい商業施設や、アニメ作品に珍しい単語が登場すると、語源を調べてしまう徹底ぶり。題材探しは困らないという。

 注目され始めたのは4年ほど前から。アニメや関連グッズの専門店「アニメイト」について「『アニマーテ』と読めば、ラテン語では『生命を与えなさい(anim āte)』という意味になる」と解説すると拡散され、共感を集めた。

 昨年1月ごろ、書籍化を打診されたという。「ラテン語は堅苦しく考えられがちだが、身近で奥深い。イメージを覆したい」とすぐに快諾した。

 短文のXとは違い、テーマを深く掘り下げつつ、分かりやすくなるよう心掛けた。初めて興味を持った人も理解できるよう、約9カ月かけ何度も書き直した。

 「世界は-」は世界史、政治、宗教、科学、現代、日本の6章構成。「パッションフルーツのパッションは『情熱』ではない」「『ハリー・ポッター』シリーズの呪文にはラテン語の要素が含まれる」など親しめる内容が並ぶ。

 古代ローマを舞台にした大ヒット漫画「テルマエ・ロマエ」の著者ヤマザキマリさんとの対談も収録。SBクリエイティブの編集担当者は「新書は5万部売れればヒット。ラテン語に絞った内容で、ここまで反響があるのは異例」と目を丸くする。

 高校まで本県で暮らしたラテン語さん。「中高生時代、モチベーションは教科書や参考書の外にあった。楽しみながら語学を続けてほしい」と地元の若者たちへエールを送った。

 「世界は-」は214ページ、990円。

インタビューに応じるラテン語さん(SBクリエイティブ提供)

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