不二製油グループ本社、中計最終年度の2024年度は増収、営業増益を計画

不二製油グループ本社2023年度(2024年3月期)売上高・営業利益
不二製油グループ本社2023年度(2024年3月期)売上高・営業利益

不二製油グループ本社は5月10日、23年度(24年3月期)の決算会見を都内の会場とオンラインで開催した。

売上高は前年比1.2%増の5,640億8,700万円、営業利益66.5%増の182億1,300万円と増収増益だった。中期経営計画最終年度の24年度は、売上高6.4%増の6,000億円、営業利益9.8%増の200億円を計画。カカオ豆価格の高騰を受けて、強みのチョコレート用油脂(カカオバター代替油脂)とコンパウンドチョコレートなどの提案・販売強化に努める。3月に発表した米国ブラマー社の構造改革を着実に実行し、グループの収益性の改善と事業基盤の強化を進める。

酒井幹夫社長は重要なポイントとして、カカオ価格高騰への対応とブラマー社の構造改革の実行の2つを挙げた。カカオ価格動向については、「23年初頭から上昇が継続しており、生育状況への不安や供給量の不足懸念が取り沙汰されたことから、24年初頭から急上昇している。原材料価格の視点では、業務用チョコレート事業へのリスクはあるが、コンパウンドチョコレートの評価が高まるという点では、植物性油脂事業と業務用チョコレート事業にとっては大きな機会になる。最大リスクとしては、カカオ原料そのものの供給不安が挙げられるが、長年の経験により一定の先物契約と現物原料を保有しており、安定した対応は可能と考えている。また、チョコレートのコスト、価格上昇による需要減への懸念に関しては、コンパウンドチョコレートを中心としたさまざまなラインアップを提供することで、お客様の需要を喚起していきたい」との考えを述べた。

ブラマー社については、「3月に構造改革を発表した。施策のポイントはシカゴ工場の閉鎖、カカオ加工事業の適正化、差別化戦略の推進の3つ。24年度においては、カカオ工場の閉鎖と生産体制の再編成に注力し、コスト削減により約30百万ドルの収益改善効果を見込む」とした。

〈カカオ価格高騰への対応とブラマー社の構造改革を進める〉

事業別では、植物性油脂事業は増収減益を計画。23年度に海外グループ会社でのスポット需要を獲得し、また販売価格の改定を行う中で、主原料であるパーム油価格が安定したことで収益性が拡大。24年度はその反動を見込む。

酒井社長は「23年度の好業績を支えた要因の一つに、欧州での成長がある。欧州ではここ数年サステナブルなパーム油の需要が高まり、欧州で販売する食用のパーム油のほとんどがRSPO認証油。加えて、パーム油に含まれる微量成分のコントロールなども欧州市場で注目が高まっている。微量成分をコントロールするには、品質の良いパーム原料と高い精製技術が必要。これらを安定的に供給できる当社の油脂に対して高い評価をいただいており、欧州エリアの収益改善につながっている。今後もこうした取り組みを強化する」と強調した。

業務用チョコレート事業は増収増益を計画。ブラマー社構造改革、カカオ価格高騰への対応に加え、ブラジル、東南アジア、欧州での成長を図る。乳化・発酵素材事業は増収も、23年度に堅調だった日本事業の反動もあって減益を計画しているが、東南アジア、中国での収益性の改善を見込む。日本、東南アジア、中国ともにクリームの拡販に重点を置く。大豆加工素材事業は増収増益を計画。円安に対応した継続した販売価格の改定や差別化製品の拡販を行う。加えて、大豆たん白食品の工場を再編し、ポートフォリオの入れ替えを進める。

中計については、「最大のテーマである事業基盤の強化は着実に進展している。グループ全体でのリスクマネジメントの強化として、原料ポジションの管理や設備投資のレビューの強化、新規設備投資案件については精査をルール化し、高付加価値ポートフォリオの構築に向けた取り組みを進めている。グローバル経営管理の強化においては、中計で導入した『FUJI ROIC』や工場生産性指標が社内に浸透しており、収益性の改善に大きく寄与している」と手応えを示した。

中長期の成長に向けては、「日本において植物性に特化した『GOODNOON』活動を推進している。強みの植物性素材の製品群の開発販売を通して当社にしかできない製品を生み出し、高収益事業を育成する。植物性ダシをはじめ、豆乳クリームバターやプライムソイなど有名店での採用をきっかけにCVSや外食チェーンでの採用も決まってきており、販売数量は着実に増加している。次期中期経営計画で成長の柱となる製品群の一つとして期待している。また、長期的な目線でのテーマ研究も進めており、新たな価値創造を行っている。おいしさ、健康といった視点に加え、原料のパーム油やカカオの代替素材などの研究、環境に配慮した技術開発などを行っている」とした。

〈大豆油糧日報2024年5月13日付〉

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