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たかが便秘とあなどらないで!医師でも見逃してしまう怖い「小児慢性機能性便秘症」【専門医】

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痛みを伴う胃痛に苦しむ幼い子供。
写真はイメージです
globalmoments/gettyimages

子どもの便秘は大人の便秘と違って重症化しやすい、ということを知っていますか。年々便秘症と診断される小児が増え、小学生の4人に1人は便秘というデータもあります。しかも、その始まりは0才代、1才代までさかのぼることも少なくないといいます。
小児慢性機能性便秘症に詳しい、東京都立小児総合医療センター消化器科部長の村越孝次先生に聞きました。

「食べたら出す」のリズムが崩れ始めたら便秘の始まり

便秘に苦しむ子どもや家族が増えている現状を背景に、2013年に日本小児栄養消化器肝臓学会、日本小児消化管機能研究会により「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」が作成されました。小児慢性機能性便秘症は、排便のない状態が慢性化して重症化した病気といえます。

「ガイドラインでは週に2回以下しか排便がない日が1カ月以上続く状態、としていますがこうなっていたらすでに腸の状態はかなり悪くなっています。こうなる前に、正しい処置をしてほしいと思います。
正常な排便とは、1日に食べた量が1日かけて出る(排便が2日に1回なら2日分、3日に1回なら3日分)という状態です。この状態から外れたら便秘を疑ってください。回数は月齢や年齢などで異なりますが、健康な排便回数を知っておくことで便秘の悪化を防ぐことができます[表1]」(村越先生)。

[表1]健康な子どもの排便回数

表にある回数より排便が少ない場合は、便秘傾向にあるといえます
(小児慢性機能性便秘症診療ガイドラインより改変)

幼児は排便を我慢することで便を腸にためこみがち

また、小児慢性機能性便秘症は、ただ何日も便が出ないというだけでなく、便意はあるが我慢している、排便に時間がかかる、排便時の痛みが強く、肛門(こうもん)がさけて出血する、などの排便困難も特徴です。こういった症状は乳幼児だからこそ起きやすいと言います。

「便秘のときの便はかたくて排便が大変ですね。排便のときに痛い思いをすると、乳児期には泣き叫ぶようになります。さらに幼児期には排便が怖くなり、排便を我慢する、という子ども特有のメカニズムでどんどん腸に便がたまってしまうのです。ためこみすぎた便をなんとか出しても腸は鈍く拡張してしまいます。その状態になると、数日ためないと便意がわからなくなり、便意があっても自力では出せずに便をためこんでしまう、という悪循環が起きてしまうのです、こうなると、のの字マッサージや綿棒浣腸(かんちょう)、食事療法などは効果がありません」(村越先生)。

生活の変化や夜型の生活が原因になることも

2017年の日本トイレ研究所の調べ(※)では全国の小学生の3人に1人が便秘状態・便秘予備軍というデータも。年々、小児慢性機能性便秘症の患者は増えている、と村越先生は言います。

「5カ月~1才の離乳期で便秘が増えることがわかっています。食事内容の変化は便秘に大きくかかわります。食事の欧米化、多様化による偏食も原因の一つでしょう。
1才以降は、保育園や幼稚園入園、下の子が生まれるなどの生活の変化、無理なおむつはずれが原因になりやすいです。排便は安心した環境でないとスムーズにできません。心と密接にかかわっています。コロナ禍の影響で逆戻りした子もいました。
また、夜型の生活リズムも影響を与えます。排便は朝が理想的ですが、夜ふかしをして朝遅く起きる生活では便意が起こりにくくなることがわかっています」(村越先生)


※全国47都道府県の小学生4777名を対象にしたアンケート。2017年3月28日~3月31日実施。

受診理由にはうんちをもらしてしまう便失禁も。便秘が原因でなぜ?

0才代、1才代から便秘症状があっても、村越先生のところに駆け込んでくる子は3~4才がピークだといいます。そして、受診のきっかけのひとつは「便失禁」だと言います。「便失禁」とは、便意はないのにおむつや下着にしみ出たようないうんち汚れがついてしまう、という状況です。便秘なのにどうして便失禁が起きるのでしょうか。

「便秘の治療は専門性が高いものです。小児科の多くでは下剤や整腸剤が処方されますが下剤を飲ませても便は出ず、それでもなお飲ませ続けたら激しい腹痛や便失禁が起きてしまうと困り果てて来院されます。
長期間出されなかった便のかたまりが直腸に詰まってしまうと[写真1]、下剤による軟便や大きな便の先が、詰まった便のまわりからこぼれ出て、便失禁になってしまいます。便がもれても、腸の中には便秘の便がたまったままになっているのです」(村越先生)

小児慢性機能性便秘症と診断された子どもの腸の写真(4才0カ月)

白い造影剤で浮き上がった黒い部分が、腸にたまった便。肛門(こうもん)の上に大きいかたまりが見えます。

2才より上の治療は長期化。予防は「便を出すこと」

小児慢性機能性便秘症と診断され、わが子の腸のエックス線写真を見せられた親たちは、皆かなりの衝撃を受けると、村越先生は言います。

「おかしいと思って周囲に相談しても病気として受け止められず、症状が進行してしまっているケースが多いですね。
小児慢性機能性便秘症の治療はまず腸にたまった便のかたまりを取り除くことから始まります。
ですから、便秘の兆候が見られたら市販品でもいいので浣腸で出してあげてください。
浣腸はくせになるという人もいますが、そんなことはありません。『便を出すと気持ちいい』という経験を重ねることが大切です」(村越先生)

初診が2才以上で、診断がそれ以降になると、治療は長期化しやすくなるといいます。浣腸と整腸剤を中心に、根気よく続けていくことになります。
「長期間便がたまっていたことで伸びてしまった腸がもとの状態に戻るのはとても時間がかかるのです。
おかしいと思ったら早めに処置をすることで、小児慢性機能性便秘症は防ぐことができます」(村越先生)。


お話・監修/村越孝次先生 取材・文/岩崎緑、ひよこクラブ編集部

便秘治療に対する専門知識を持つ医師はまだ少ないのが現状です。日本トイレ研究所のホームページにある「排便に悩む子供たちのための病院リスト」が参考になります。気になる方はチェックしてみてください。

●排便に悩む子どもたちのための病院リスト


村越孝次先生(むらこしたかつぐ)

Profile
東京都立小児総合医療センター消化器科部長。東京都立八王子小児病院外科勤務を経て現職。「小児慢性機能性便秘症診療ガイドライン」の作成に協力。

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