【ケニー・オメガ インタビュー前編】米国のプロレス団体「AEW」のケニー・オメガ(39)が本紙のインタビューに応じ、現在のプロレス界に対する思いを激白した。CMパンク、ブライアン・ダニエルソンと元WWEスーパースターが続々と合流し、AEWは今や飛ぶ鳥を落とす勢い。同団体の副社長も務めるケニーが躍進の秘訣を語った。

 ――AEWが勢力を拡大中だ。成功の要因は

 ケニー レスリングについてこれまで違う取り組み方をしていること、出ているレスラーが非常に優れていることに尽きる。テレビでのレスリングという意味について言うと、WWEなんかはとても有名な会社ではあるけれど、やればやるほど本当のプロレスから遠ざかっているように感じる。これまでファンは「これがプロレス」「これがいい試合だ」といった固定概念をWWEから教えてもらえると思ってしまっていた。で、結局5年、10年と経つうちに洗脳されてしまっていたんだよ。団体から提示されたものをそのまま刷り込まれてしまっていたんだな。

 ――AEWの誕生によってそれが変化した

 ケニー 俺たちには、WWEとは違うやり方でプロレスを提案するチャンスがあった。そして幸運にもファンからの理解を得ることができた。AEWが見せる「いい試合」をもっと見たいと思ってもらえたんだ。さらにもっと踏み込んで言うと、実際にWWEでやっていたレスラーたちが「もう1回、俺もこういうプロレスがしてみたい」「俺もAEWに行きたい」と感じるようにまでなってきたんだ。ジョン・モクスリーもCMパンクもブライアン・ダニエルソンも、プロレスの本来あるべき姿、伝統、レガシーを求めてここに来たんだよ。

 ――CMパンクは7年もプロレスから遠ざかっていた

 ケニー 彼のなかでWWEには戻らないということは決まっていた。確かに長い間プロレスから離れていたけど、彼もその間、自分のことを「ベストなレスラー」だと呼び続けていたし、AEWにいるレスラーもみんな彼を求めていたんだ。CMパンク自身も、いまだに自分がベストだということを証明したい気持ちがあったんだと思う。

 ――来週はブライアンとの対戦が決定している(※インタビューは日本時間19日時点。23日にシングルマッチが行われ30分時間切れ引き分け)

 ケニー CMパンクもブライアンも、自分のことをベストと呼んだり、ベストと言われる場所(WWE)でプロレスをしていた人間だよね。そういう人間たちと対戦することにあたって、俺が「自分こそがベスト」だと言葉にする必要はない。なぜなら俺のことを「ベスト」と呼び始めたのは、俺自身ではなくファンなのだから。それを証明したいね。

 ――WWE勢のAEW参戦は今後も続きそうか

 ケニー 絶対にこれからもっとたくさん出てくるよ。いまWWEにいる90%くらいのレスラーはAEWでやりたいと思ってるんじゃないのかな?

 ――具体的に参戦して欲しいレスラーは

 ケニー すでにたくさんの人間が来ているし、取り立てて、これ以上誰かが欲しいとかはないし、対戦相手に困ることはないね。だから特に誰ということはないんだけど…しいて言うならローマン・レインズとやれれば、本当のチャンピオンがどういうものかを証明するいい機会にはなるんじゃないかな。

 ――日本人や日本を主戦場とする選手では

 ケニー それはこの会社を良くするため? それとも俺が個人的に対戦したい相手?

 ――両方聞いてみたいですね

 ケニー もちろん飯伏(幸太)の名前は上がるよね。米国に来たら、という意味ではオカダ(カズチカ)はものすごくファンが喜ぶと思う。竹下(幸之介)もファンの反応がすごくよかったし、また来て欲しい人間だよね。あと個人的に戦いたい相手としては(ウィル)オスプレイとジェイ・ホワイトかな。

 ――その理由は

 ケニー その2人は新日本が「新しいケニー・オメガ」にしたかったレスラーたちだよね。もちろん俺のレベルには全然到達してないんだけど、今の新日本のなかではレベルの飛び抜けた選手だと思う。だから彼らと試合ができれば、俺がかつていたレベルと今のレベルの違いを世界に見せつけるいい機会になるんじゃないかなって思うよ。その2人にとっては現実を知る悲しい日になってしまうし、新日本のフロントもシクシクと泣いちゃうと思うんだけど。

 ――AEWの躍進が他団体に及ぼす影響は

 ケニー AEWは他の団体からもタレントをたくさん使っているよね。AEWが彼らにいいおカネを払うことによって、他の団体もレスラーたちにきちんといいおカネを出すようになっていくじゃない? これって業界全体にとってとてもいい影響、経済効果を生み出すはずだよね。一人勝ちだとか、他団体が廃れるような現象が起きるのではなく、業界全体が潤ってレスラーに還元されていくと思う。

  ――AEWの今後について

 ケニー 俺たちはまずはAEWのプロレスを見せ続けていく必要がある。ここでは他の誰かに言われるままでなく、レスラーたちは自分で自分の心を発信していかないといけない。自分自身の自由のためにね。どんな時でも「すごいプロレス」というものはハイブリッドなものであり、ストーリーやエンターテインメント性が必要になってくると思う。試合だけでなく、それぞれのモチベーション、感情、ストーリーを見せることを続けていくよ。(後編に続く)