前代未聞の裏切りだ。大相撲の元幕内力士で格闘家に転向した大砂嵐(26=本名アブデルラフマン・シャーラン)が26日、格闘技イベント「RIZIN」から試合契約を解除された。今年4月に静岡県の高速道路で無免許運転し速度超過した疑いがあるとして、警察の捜査対象となっていたことが発覚。本人は事実関係を認めており、廃業意思を明かしているという。無免許運転で略式起訴され、日本相撲協会から引退勧告を受けて角界を去ってから、わずか1か月後の愚行。年内2度目となる不祥事のあきれた全貌とは――。

 大砂嵐は今年1月に長野県内で無免許運転で追突事故を起こし、3月に日本相撲協会から勧告を受けて引退した。その後は格闘家に転身し、9月30日の「RIZIN.13」のボブ・サップ戦で第2の格闘技人生が幕を開けた。

 そんな矢先に、再び無免許運転と速度超過疑惑が浮上した。時速約140キロで走行した可能性がある車は本人名義のものではなく、同乗者がいた模様だ。本人は「僕です」と事実関係を認めているといい、RIZINを運営する「RIZIN FF」は26日付で試合契約を解除したと発表した。

 それにしても角界引退からわずか1か月後に、性懲りもなくハンドルを握るとは…。しかも大砂嵐に近い関係者によると、運転する姿がオービス(自動速度違反取り締まり装置)に撮影された4月30日は、RIZINとの契約交渉の席に座る前日だった。再起のチャンスをもらうために静岡方面から東京へ向かう手段が「無免許運転」だったというのだから、あきれるしかない。

「榊原(信行)さん(RIZIN実行委員長)からも、無免許の件は何度も念押しして聞かれていたはず。そのたびに本人も『もうやっていません』と答えていました。(大相撲を)廃業して手を差し伸べてくれたのに、裏切ったことになる」(同関係者)

 一方、今春の違反にもかかわらず、静岡県警からRIZINに問い合わせがあったのは10月2日のことだった。なぜか。実は、テレビ中継された大砂嵐の格闘技デビュー戦を静岡県警の担当者が見たことで、オービスの写真の男と同一人物だと気づいたからという。まさに天網恢恢疎にして漏らさず――。全国ネットで顔を売った結果、悪事が露見してしまったというわけだ。

 大砂嵐は現在、生活と練習の拠点である米ロサンゼルスに家族とともに滞在している。県警は再来日を待って詳しい事情を聴く方針で「本人も捜査状況に応じて従う意向を見せている」(前出の関係者)。

 とはいえ、RIZINから契約を解除された今となっては、それ以外の用事で日本に来る予定はない。これだけ短期間で不祥事を連発すれば他団体も容易に声はかけられず、プロ格闘家としての未来は閉ざされたも同然と言っていい。

 前出の関係者は「向こうで仕事を探すしかないんじゃないですかね。格闘技? 廃業でしょう。米国であの体重(約167キロ)では試合できないでしょう。実質引退なんじゃないでしょうか」。今回の一件を受け、大砂嵐は謝罪の言葉を繰り返す一方で「仕事探さなきゃ。家族もいるので、食わせないと」と、廃業の意思を固めた様子だったという。

 角界と格闘界、わずか1年もたたないうちに2度廃業した人間は当然ながら今まで誰もいない。前代未聞の不祥事によって、お騒がせ男は「戦う免許」さえ持てなくなりそうだ。