2024年6月3日(月)

令和の日本再生へ 今こそ知りたい平成全史

2024年5月21日

 今から約60年前、1963年の暴力団構成員数は戦後ピークの18万4000人を数えた。それが2023年は2万400人、最盛期の1割近くまで減少した。一説によると日本のタレント数が2万5000人超というから、タレントよりヤクザの数が少ない。警察庁では暴力団を「反社会的勢力(反社)」としているが、産業的に見ればすでにオワコンに近い。特に平成はそれらの動きを加速させた時代だと振り返ることができる。

IAN.CUIYI/GETTYIMAGES

 彼らが手掛ける犯罪のうち今もシェア1位を占めるのは覚醒剤の密輸、密売ぐらいだ。全国の流通をほぼ独占的に牛耳り、覚醒剤は彼らが所属する組という垣根を越えて横断的に流通している。大麻や危険ドラッグ、特殊詐欺などになると、もっぱら匿名型流動性犯罪集団(半グレ)や不良外国人が中心である。

今、なぜ、平成という時代を振り返る必要があるのか?(前編)
今、なぜ、平成という時代を振り返る必要があるのか?(後編)

 警察庁は暴力団の伝統的資金源(シノギ)を覚醒剤、恐喝、賭博としている。このうち恐喝は年々減少している。相手が、自分を何組の誰と分かった上で強行するのが恐喝だが、今は被害者に自分がどこの誰だか分からせない、つまり名前や身分を偽り、隠れることでカネをだまし取る詐欺の方が犯罪の主力であり、被害額も大きい。

 ヤクザは「男を売る」商売といわれるように、周りに自分がどこの誰と分からせた上でシノギを進める。逆にオレオレ詐欺などは徹底的に被害者をだまし、自分が被害者の孫だとさえ偽る。恐喝と詐欺は両方とも相手からカネを奪う犯罪だが、その働きかけ方は脅すか、だますか、正反対のアプローチをとる。現在、詐欺に手を染める組員は多いが、本来は恐喝こそ暴力団の得手であり、特殊詐欺などにはヤクザがむしろ半グレの後に進出している。一般的にヤクザは若手が少なく、新しいシノギの創建や熟達は不得手である。

 シノギのうち、賭博は競馬や競輪などの公営賭博に押され、かつ常設盆(注・常設賭場)や野球賭博は警察による徹底的な取締りで壊滅状態といっていい。他に飲食店や遊技場などからの「みかじめ料(注・後見役代、用心棒代)」があるが、これも近年、警察の指導や11年までに施行された暴力団排除条例(暴排条例)で店が打ち切りにするか、大幅に減額した上、渋々支払う程度に削がれている。


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