2024年6月4日(火)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2024年5月16日

 3月の全国人民代表大会(第14期全国人民代表大会第2回会議)「政治報告」が掲げた2024年の政策課題は、第1に「現代化産業体系」の構築推進、第2に「科学教育興国戦略」と「質の高い発展」の基盤固めであり、前年に第1課題であった内需拡大は第3位に後退した。

習近平政権は国内需要よりもイノベーションを重視している(ロイター/アフロ)

 需要不足に悩むマクロ経済の状況から見てこの順位について議論がなされるのは当然である。しかし本稿では、習近平政権が改めて「質の高い発展」を表明した点に注目し、そのカギを握る科学技術イノベーションの実態について紹介してみたい。

成長戦略のシフト

 中国の経済成長において、投資効率の低下、人口ボーナスの終焉が明らかとなって久しい。成長要因分析からすると、残された要因である全要素生産性(Total Factor Productivity:TFP)の向上が今後のカギを握ることになる。そこには、科学技術イノベーションの促進、人材育成の強化が含まれるが、中でも重要なのが前者である。

 中国はこうした基本認識に立ちながら、国際経済環境の変化に対応して、国際経済を「国際大循環」、国内経済を「国内大循環」と呼び、後者をより重視する「二重循環」(中国語「双循環」)戦略(2020年~)にシフトしてきた。さらに、近年では、「国家安全」が最重視されるようになっており、科学技術イノベーションもまたその影響を受けている。

 影響をより具体的にみると、「中国製造2025」(15年)の段階では、戦略的に発展を図る産業の明示が行われた。その後、米国との技術摩擦が激化する中で、科学技術分野の「カギとなるコア技術」の国産化が提起されるようになり(18年)、20年以降は「卡脖子」(「首を絞める」という意味の中国語)技術35項目がリスト化されて技術的突破が追求されている。

 同リストに関しては、23年までに21項目で「突破」があったとされている(表参照)。


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