“中古マンション”を購入する際、資産価値を考えるなら築●年が狙い目?

近年、新築より安い値段で、自分好みのリノベーションができる中古マンションに注目が集まっています。とはいえ、長らく「家を買うなら新築」だった日本では、中古マンションと聞くと「古い」「安全性が心配」「長く住めない」といったネガティブなイメージも残っています。実際のところはどうなのでしょうか。今回、住宅診断(ホームインスペクション)やマンション管理組合向けコンサルティング、不動産購入に関する様々なアドバイスを行うさくら事務所の創業者・不動産コンサルタントの長嶋修氏に取材し、お話を伺いました。新築マンションとの違いにフォーカスし、価格や資産価値、耐久性といったさまざまな観点から、総合的に中古マンションの概要をお伝えします。

そもそも「中古マンション」とは?

そもそも「中古マンション」とはどんなマンションを指すのでしょうか? 単に「古い」「築年数が経っている」というイメージがありますが、新築とどう違うのでしょうか。新築マンションが中古マンションになるときは、以下の二つのうちどちらかを満たしたときです。

・一度でも人が住んだマンション
・建築から一年が経ったマンション

いくら建ったばかりのマンションとはいえ、一度でも人が住めば、その時点で中古マンションになります。その一方で、一度も借り手がいなかったとしても、建築から一年が経てば新築ではなく中古の扱いになります。

そう考えると、一般的にイメージされるよりも多くの中古マンションがあることがわかりますね。

中古マンションが人気なのはなぜ?

新築至上主義が変わってきた背景には、ここ10年ほどにわたる、新築マンションの価格の高騰が背景にあります。例えば、2020年1月の首都圏のマンション平均価格は、一戸あたり8000万円を超えています。

背景にあるのは、発売戸数が激減したことと、よりリーズナブルな新築マンションが減っていること。首都圏ではこの20年で、マンションの発売戸数が半分以下になりました。駅から遠いところや、都心部から離れたところでの開発が減ったためです。

現在多いのは、より駅近、より都心部の大規模マンションやタワーマンション。こうした物件は利便性が良く、機能性も高いので価格が高くなりがちです。

こうした新築マンション価格の高騰を受け、より価格の安い中古マンションに注目が集まるようになりました。実際、中古マンションの発売戸数はすでに新築を上回っており、もはやマンション売買の主役は新築ではなく中古マンションになっているのです。

新築マンションと中古マンションで価格はどう変わる?

といっても、中古マンションの方が安いとはいえ、いったいいくらくらい違うのでしょうか?

一度でも人が住めば2割下がる

先ほど、中古マンションの定義として「一度でも人が住んだことがある」と述べましたが、実はこの時点でマンションの建物の価値は2割減ります。つまり、5000万円の新築マンション(建物が3000万円、土地が2000万円)は、一度人が住めば建物の2割の価値=600万円分下がり、4400万円になると考えるとわかりやすいでしょう。

税金や住宅ローン、購入後の費用は違う?

とはいえ、マンションは今後長く住んだり、数十年にわたって住宅ローンを組んだりするため、購入価格以外の費用も気になりますよね。結論から言うと、新築マンションと中古マンションで、税金や住宅ローン、購入後の費用に大きな違いはありません。

新築でも中古でも同じ住宅ローンを組むことができますし、一定の基準を満たせば住宅ローン控除も適用され、税金を安くすることができます。

一方購入後の費用として、将来の修繕に備えて毎月一定額を積み立てる「修繕積立金」がありますが、これは新築マンションの方が安い傾向にあります。ですが、マンションのメンテナンスのための貯金ですので、安ければいいというわけではありません。

中古マンション価格の推移は?

いくら中古マンションの価格が安くとも、将来定年を迎えるなど、ライフステージの変化とともに売ることを考える場合、すごく安い値段でしか売りに出せないとなると困りますよね。そもそも、マンションの価格はどう推移するのでしょうか?

資産価値を考えるなら築20年の中古マンションがおすすめ

物件によりますが、一般的にマンションの価格は築10年で20〜25%ほど下がり、築20年経つとその下落率がなだらかになります。

そういった理由からも、資産価値を重視して購入する場合は、新築マンションではなく中古マンション、特に築20年前後の物件がおすすめです。

マンションは個別性が高い市場

とはいえ、マンションはとても個別性が高い市場です。上記は一般的な話であり、これに当てはまらないケースもあります。

例えば、都心のある高級マンションでは、1985年に経てられ築35年以上が経ちますが、現在の販売価格は当時を上回っています。中古車と同じで、価値が落ちる車種が一般的なものの、例えば一部の高級車種は価値が落ちないといった世界なのです。

利便性の高いマンションは価値が下がりにくい

価値が落ちにくい、またはむしろ上がっているマンションに共通しているのが「リーズナブル」であること。駅近、都心部のマンションは今後も価値が下がりにくいでしょう。

というのも、現在は共働きの世帯が増えており、家そのものの快適さ(広さや日当たり等)よりも、利便性を重視する傾向があります。実際、駅から徒歩7分を超えると、とたんに物件の売買が難しくなります。

マンションは個別性の高い市場だと言うと、資産価値の上では選ぶのが難しく感じられますが、今後の社会がどうなっていくか、どういう物件が多くの人に好まれやすいかを考えると選択肢が見えてくるでしょう。

耐久年数の違いは?

中古マンションを新築と比べてもうひとつ気になるのが、耐久性ではないでしょうか。「中古マンションは買った時点で古いから、長くは住めないのでは…」と心配する人もいるかもしれません。

しかし、購入時にきちんとチェックしておけば、中古マンションでも新築同様、もしくは物件によっては新築よりも、安心して長く住むことが可能です。

マンションは「どれだけ手入れされているか」が重要

「どれだけ長くここに住めるか」というのは、「どれだけマンションが手入れされているか」によります。たとえ新しく建てられた新築マンションだったとしても、数十年のあいだ一度も修繕されていなければ老朽化が進み、もう住めない、もしくは住みたくない家になってしまいます。

買う予定のマンションがどれだけ手入れされるかは、そのマンションにお金があるかどうか=どれだけ修繕積立金を積み立ててきたかによります。購入時には、修繕積立金が極端に低くないかを確認しましょう。

耐震性は耐震基準と地盤の両方を見よう

マンションの安全性で気になるのが、「地震に強いかどうか」ですよね。実は、1981年6月以降に建てられたマンションであれば、同じ耐震基準でつくられているため、新築か中古かは関係ありません。

また「地震に強いかどうか」は、そのマンションが建っている地面が揺れやすいかどうかに大きく関わってくるため、どんな地盤か確認するのを忘れないようにしてください。

中古マンションのメリット・デメリットまとめ

以上、新築マンションと中古マンションの違いをいくつかの観点からお伝えしました。最後にメリデメをまとめてみます。

中古マンションの一般的なメリットは以下です。

・新築マンションより安い
・築20年ほどであれば資産価値も下がりにくい
・好きなようにリノベーションできる

中古マンションの一般的なデメリットは以下です。

・購入前に耐久性等をより細かくチェックする必要がある
・住宅ローン控除の基準項目が新築よりも多い

メリット・デメリットを正しく知り、新築・中古といった言葉にとらわれずに、自分たちに合ったマンションを探しましょう。

<取材協力>
株式会社さくら事務所
監修:長嶋 修

※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成されています。公開後に制度・内容が変更される場合がありますので、それぞれのホームページなどで最新情報の確認をお願いします。
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