新築より中古マンションの人気が上昇 中古が選ばれる理由は価格だけじゃない!

近年、新築マンションより中古マンションの人気が高まっている、というニュースをよく目にします。その理由はいくつか挙げられています。新築マンションの供給数が減っていることもあり、中古マンションのほうが選べる物件数は多いこと。新築マンションの価格が高騰して手が届きにくい価格となり、購入を検討する世帯の目が中古マンションに向いていることなどが主な理由と指摘されています。しかし、どうやらそれだけではないようなのです。実態を見ていきましょう。

中古マンションの検討率が新築を上回る

リクルートの「『住宅購入・建築検討者』調査 (2021年12月)・年間まとめ」によると、「2019年以降で初めて、中古マンションの検討率が、新築マンションを上回った」というのです。「検討している住宅の種別」を聞いたところ、最多は「注文住宅」(54%)でしたが、マンションだけで見ると、「新築マンション」(29%)より「中古マンション」(30%)がわずかながら上回っています。これは2019年以降初めてのことです。

検討している住宅の種別
出典:リクルートの「『住宅購入・建築検討者』調査 (2021年12月)・年間まとめ」より抜粋転載

特に、新築マンションの価格高騰が激しい首都圏でこの傾向が強いのですが、年収や年代ではどうでしょうか? 世帯年収では、600万円未満の世帯で中古マンション検討者が新築を上回っているので、価格面での影響がうかがえますが、一方で1,500万円~2,000万円未満の高所得世帯でも中古マンション検討者が上回っています。また年代別では、20代・40代・60代と飛び飛びに中古マンション検討者が上回るという結果になっています。どういった世帯で中古マンションニーズが強いかは、一概に年収や年代だけでは言いづらいようです。

なお、リクルートの調査は2021年12月に実施したもので、過去1年以内に住宅の購入に関する具体的な行動をした、首都圏・関西圏・東海圏・札幌市・仙台市・広島市・福岡市在住者を対象にしています。

中古マンションは新築より価格が手頃な点が大きな理由

次に、中古マンションの人気が高まる背景について、国土交通省が実施した「令和3年度住宅市場動向調査」結果から探っていきましょう。

この調査は、2020年4月~2021年3月に住み替えるなどした全国の人を対象に、2021年9月~11月に実施したもの。この調査結果の中から、新築マンション(調査では分譲マンション)と中古マンションを購入した人に絞り込んで見ていきます。

まず、年齢と年収を比較してみましょう。

■世帯主の年齢と世帯年収
◇中古マンション

世帯主の年齢・世帯年収(中古マンション)
1200万~1500万円未満 3.5% 
1500万~2000万円未満 4.2%
2000万円以上 1.8%

◇新築マンション

世帯主の年齢・世帯年収(新築マンション)
出典:国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査 報告書」より

平均年齢はいずれも40代半ばで、30歳代と40歳代が中心となりますが、新築と比べて中古マンションのほうが60歳以上も多いなど幅広い年齢が購入しています。世帯年収では、平均年収が新築の912万円に対し中古は745万円で、新築マンションの購入者のほうが高くなっています。また、中古マンション購入者では、リクルートの調査と同様に世帯年収600万円未満の比率が高くなっていますが、高所得層も少なからず購入しているという状況でした。

次に、その住宅を選択した理由を見ましょう。

■住宅の選択理由
◇新築マンション

住宅の立地環境が良かったから 69.6%(前年度69.4%)
新築住宅だから 63.8%(前年度57.4%)

◇中古マンション
住宅の立地環境が良かったから 66.2%(前年度54.8%)
価格が適切だったから 64.4%(前年度67.1%)

どちらも上位2つがほかの選択肢より多く、6割を超えています。新築では立地の良さに加えて「新築だから」という理由が挙がります。まだ誰も住んだことがないまっさらなものが良い、ということでしょう。一方中古を見ると、前年度は「価格が適切」がトップでしたが、令和3年度では「立地の良さ」がトップになっています。手頃な価格だけでなく、希望の立地という点でも評価されていることがわかります。

「新築へのこだわり」と「リフォームの効果」も決め手に

では、中古マンションにした決め手はどんな理由だったのでしょうか? 「予算的にみて中古住宅が手頃だったから」(70.1%)がダントツというのは予想通りですが、キーポイントはほかにあります。「新築住宅にこだわらない」ことと「リフォームの効果」です。

かたや、新築マンション購入者が中古マンションにしなかった理由として、「新築のほうが気持ちが良いから」をダントツに挙げています。この「新築へのこだわり」を強く持つか持たないかが、選択を分けるひとつの決め手にもなっているわけです。

■中古マンションにした理由(中古マンション購入者)

中古マンションにした理由

■中古マンションにしなかった理由(新築マンション購入者)

中古マンションにしなかった理由
出典:国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査~調査結果の概要(抜粋)~」より

もうひとつの決め手がリフォームの効果です。中古マンションにした理由として「リフォームで快適に住めると思ったから」(39.1%)に加え、「リフォームされてきれいだったから」(29.2%)が挙がっています。これらの項目は、前年度の調査から増加しています。

リフォーム・リノベーションが普及し、それらによって経年劣化が解消されるだけでなく、新築住宅にはない自分好みの間取りや内装などが実現することへの期待がある、ということが考えられます。また、近年は特に中古マンションで、築年数の経過した住戸を不動産関係の事業者が買い取って、リフォームした上で売り出す事例が増えています。こうした物件への評価が高まっている、ということもあるのでしょう。

一方、中古マンションにしなかった理由として、「リフォーム費用などで割高になる」(33.2%)が挙がっています。これは実際に中古購入を検討した際にリフォーム費用の見積もりをした経験から言っているのか、高額な費用がかかるイメージから言っているのか、明確ではありません。ただしほかにも「給排水管などの老朽化」や「隠れた不具合」、「耐震性や断熱性などの品質」への懸念という理由も多く挙がっています。

これは筆者の印象ですが、「自分ではよくわからないもの(リフォーム費用や住宅の品質など)をしっかり確認する」よりも、「新築マンションなら品質面も安心だろうし、価格もわかりやすい」と思って選択しているのではないでしょうか?

だとしたら、旅行の際に大手旅行会社のパッケージツアーを選ぶか、自分で移動ルートや宿泊先、観光地を調べて組み合わせるか、といった選択する際の考え方の違いのようにも思います。

中古住宅の品質を担保する制度も増加

なお、新築マンション購入者が中古を選ばなかった理由のうち「隠れた不具合への不安」が減少する傾向にあります。これは、中古マンションの建物を診断する「インスペクション」や検査と保険をセットにした「瑕疵保険(かしほけん)」、不動産会社による「保証サービス」などが普及していることなどから、不安が減っているのかもしれません。

中古マンションを選んだ人の中には、「品質が確保されていることが確認されたから」(12.7%)、「保証やアフターサービスがついていたから」(7.0%)と言った理由を挙げた人もいます。価格が手頃で、新築であることにこだわらず、リフォームへの効果への評価も高いということに加え、品質の確保や保証などを確認している人もいるわけです。「手間をかけても、合理的にコストパフォーマンスを考える」という人が、中古に目を向けているとも考えられます。

こうして見ていくと、中古マンションが人気になっている理由は、単純に価格の手頃さや物件数の多さだけではないようです。今後は、若い世代がマイホーム取得の中心になっていきます。Z世代(おおむね25歳以下)は、ブランド志向があまりなく、古い文化や持続可能性に関心が高いと言われています。この世代が選ぶマイホームとして、中古住宅の人気がますます高まるかもしれませんね。

執筆者:山本 久美子(住宅ジャーナリスト)

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