静岡知事選に前浜松市長鈴木氏が出馬表明、元副知事大村氏は政策発表

大海英史 田中美保 青山祥子 青田秀樹
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 川勝平太知事の辞職に伴う知事選で、前浜松市長の鈴木康友氏(66)が15日、正式に立候補を表明した。すでに表明している元副知事の大村慎一氏(60)も同日、基本政策を発表した。両氏の支援をめぐり、連合静岡は鈴木氏推薦の方針で最終調整に入った。一方、自民党県連は推薦候補を決めていないが、静岡市内の支部が独自に大村氏推薦で調整に入り、県西部との分裂含みになりつつある。(大海英史、田中美保、青山祥子、青田秀樹)

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 「混迷する県政を立て直し、オール静岡で県の発展に全力を尽くす」。記者会見を開いた鈴木氏は、与野党を問わず推薦を求め、無所属で立つと説明した。

 川勝氏辞職を聞き、「自分は即戦力」とすぐに立候補の意思を固めたという。浜松市長4期16年、衆院議員2期、企業経営などの実績を挙げ、「知見、経験を全て注ぎ込む」と語った。会見には県西部の遠州鉄道会長やハマキョウレックス会長も同席した。

 基礎的な住民サービスは市町が担うため、県の役割は産業や観光の振興だとし、浜松市で進めた企業誘致や「スタートアップ」と呼ばれる起業の後押しを図るという。川勝氏と議会が対立したことを踏まえ、「コミュニケーションをしっかりとる」とも強調した。

 リニア中央新幹線静岡工区については、大井川の水資源や南アルプスの生態系に触れ、「環境との両立を図りながら推進していく」とした。リニア開通で新幹線「のぞみ」の役割が移り、県内の新幹線停車本数が増えて県民にもメリットがあると訴えた。

 浜松市で県が計画する新県営野球場については開放型のドーム形球場が望ましいとの考えを示した。周辺の開発を含めてプロ野球日本ハムの本拠地「エスコンフィールド北海道」のような「ボールパーク」をつくり、民間投資も呼び込むという。

 静岡大と浜松医科大の統合・再編は、大学の判断としながらも、医療の充実に加え、バイオや創薬の拠点として「静岡県が成長できる」と期待を込めた。

 大村氏との違いは何かと問われると、浜松市長としての実績を強調し、「私の売り」と話した。そのうえで「浜松とか県西部の人間だと思われているが、全県を視野にやっていく」と訴えた。

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 大村氏は15日、知事選で掲げる基本政策を説明する記者会見を静岡市内で開き、「有言実行」を強調した。

 真っ先に挙げた防災対策では「能登半島地震があり、災害はいつくるか分からない。基盤整備を進めなければならない」と述べ、道路の強靱化や防波堤の整備などを挙げた。

 また、県内大学を中心とするコンソーシアムを土台に「静岡デジタル大学」をつくり、デジタル人材の育成を強化すると訴えた。デジタル技術を活用することで生産効率が上がり、課題の解決や人手不足の解消にもつながるとし、「デジタル先進県」をめざすという。

 リニア中央新幹線静岡工区の問題については、水資源や南アルプスの環境保全の対策をJR東海に求めたうえで推進する考えを示した。「リニアが通れば東海道新幹線の利便性が高まる。流域市町と対話し、責任をもって解決する」とした。

 浜松市で計画している新県営野球場については、県西部財界などが要望する多目的ドーム形にするかどうかの明言は避けた。「ドームは魅力的だが、県の懐事情もある。地元の意見を聞いて進めたい」と説明した。

 さらに総務省官僚として長く勤めた経験を挙げ、「私は政治と金の問題はなく、クリーンな県政ができる。災害や新型コロナウイルス対策で全国と連携してきた。行政経験に基づく課題解決の実行力とネットワークが強み」と強調した。

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 連合静岡の角山雅典会長が15日、推薦願を出した両氏とそれぞれ会い、政策などを聞いた。面会後、角山会長は記者団に対し、「大きな差はない。(加盟労組の)皆さんの意見を聞きながら決めたい」と話した。

 関係者によると、面会を踏まえて執行部などで協議し、浜松市長時代に推薦したことや将来への構想などから鈴木氏推薦の方針を確認し、産業別労組に伝えたという。16日に産別労組の意見を聞き、17日の執行委員会で正式に決定する。

 連合静岡と推薦候補を一本化する方針の立憲民主党国民民主党、県議会会派ふじのくに県民クラブも両氏と面談するなどして協議する。連合静岡に同調する見通しだが、立憲、ふじのくにには慎重な意見もある。

 独自候補擁立を見送った自民党県連は14日、静岡市内のホテルで県選出国会議員や県連役員らが集まり、推薦候補を1人に絞る方針を決めた。土屋源由総務会長、河原崎聖政調会長らが両氏と面談して政策などを確認し、18日の県議の議員総会・県連役員会で大枠の方針を決める。

 一方、静岡市内の支部は地元出身で県中部財界が支援する大村氏を推薦する方向で調整に入った。県連決定を前に大村氏推薦の流れをつくる構えだ。浜松市議には鈴木氏支援の動きがあり、県連内でまとまるかが今後の焦点になる。

 城内実会長は15日、東京の衆院議員会館で記者団に対し、「なんでそう決まったのという話になるかもしれないが、基本的には従ってもらうのが望ましい。どちらに決まっても別の地域から批判が出るのは仕方がない」と話した。

 前回21年の知事選で川勝知事の支援に回った共産党県委員会は両候補の政策に相いれない面があるとして市民団体と候補擁立を模索している。

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