仙台市の観光施策の検討会が報告書

福留庸友
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 観光振興の財源として仙台市が導入を目指す宿泊税について、市は16日、そのあり方を議論していた検討会議から報告書を受け取った。税額は1人1泊200円を提案。今後、報告書を基に同じく宿泊税の導入を計画する宮城県と調整を進める。

 「市交流人口拡大推進検討会議」が報告書を出した。報告書は、コロナ禍の後で都市間の競争が高まる中、ハードとソフト両面でまちの魅力を高める必要性を指摘し、「宿泊者の満足度向上」と「持続可能な観光地域づくり」の方針を掲げた。

 具体的には、イベントを含む訴求力のあるコンテンツづくりや、インバウンド獲得に欠かせないキャッシュレス決済といった観光DX推進策を挙げ、年15億~23億円の財源が必要と試算した。

 その上で、すでに宿泊税を導入済みの他都市の水準などから1人1泊200円の税額を示した。仙台市の2024年の宿泊者数の達成目標650万人泊から概算し、約12.3億円の財源確保を見積もる。

 また、免税についても提言。震災遺構などを巡る教育的な学習旅行については、「市ならではの特性であり、高い公益性がある」と課税免除が適当と判断した。小さな宿泊事業者や観光客への配慮としては、「一定額以下の宿泊料金には課税しない利益も相当程度ある」と理解を示した。

 一方で、免税を設定した場合、判定のための定義や確認方法を厳密に定める必要があると提言すると同時に、「制度はできる限りシンプルに」という委員の意見も添えた。

 宿泊税に関しては、県も「1泊3千円以上の宿泊客ひとりに300円の課税」をベース案とし、導入を検討中だ。今後、市と県は税額、免税の設定などの詳細を調整し、それぞれの議会に条例案を提出する予定。

 郡和子市長は報告書を受け取った後の記者会見で「賛否含めた議論の中で道筋を見いだしてくれた委員に感謝したい。県との調整が整えば6月(定例会)もありうる」と話した。

 検討会議は2020年1月に初開催され、コロナ禍で中断。23年11月に東北大の吉田浩教授(経済学)が会長を務め再開し、議論を進めてきた。福留庸友

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 仙台市は、宿泊税の納税者になる旅行者から直接意見を聞くため、3月中に3日間、市職員が仙台駅などで対面アンケートを行った。

 566人から回答を得た。回答者の9割が県外在住者で、目的の9割は観光かビジネスだった。「支払っても良いと思う金額」の回答では、200円が最多の34%(194人)、300円が31%(178人)だった。払いたくないと答えたのは4.4%(25人)だった。

 また、市は2月末から1カ月間、パブリックコメントも募集。420件の意見が集まり、「さらに宿泊客が減る」「事務作業が負担」など、「半数以上が反対という認識」(市観光課)だった。パブコメでは一部に、文体から生成AI(人工知能)を使って投稿されたと推測できるものもあった。観光課は「断定はできないが、AIを使ったものだとしても、一つの意見として受け止める」とした。福留庸友

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