「ワイン構想」白紙の道の駅に迫る期限 新装開業で高さ生かせるか

坂田達郎
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 山形空港と高速道路インターチェンジから数キロの近さ。山形県河北町の道の駅河北は、町が「ランドマーク」と位置づける好立地にある。しかし、休館を重ねるなど運営は厳しく、4月に新装開業したが、新たな投資がしにくい事情を抱えている。

 火の見やぐらを思わせる4階建ての建物、愛称「ぶらっとぴあ」。町が整備し、国道287号と、県内だけを流れる日本三大急流の一つの最上川に挟まれるように立つ。

 広さ約170平方メートルの1階には、町が生産量日本一を誇るスリッパなどの土産物が並び、土日・祝日には地元産のイチゴ「おとめ心」を使ったふわふわかき氷やつぼ焼きいもが人気という。2階にはスリッパ卓球を楽しめる卓球台があり、3階はレストランだ。

 1994年4月に道の駅として開業した。横に長い建物や広大な駐車場があり、様々な施設を併設――といった近年人気を集める道の駅とは趣が異なっている。

 駐車場は50台分余りで広いとは言えず、産直施設を設けるようなスペースはない。

 2018年春、指定管理者だった町内の事業者が2年間で運営を断念し、休館した。設備投資に見合う売り上げに達しなかったことなどが一因だった。それ以前にも休館の時期があり、試行錯誤の運営が続けられてきた。

 3年ほど前、再生への期待が高まったことがある。

 「目玉がワイナリーとレストランの整備。ワイナリーのある道の駅であることを強くアピールしていく必要がある」

 21年12月の町議会で森谷俊雄町長は意欲を見せ、23年4月のグランドオープンをめざすと述べた。21年4月に設立された町内の地域商社「かほくらし社」が指定管理者として運営し、ワインを軸にする構想だった。

 1階はワイン醸造室と分析室、2階は町内産や県産ワインの貯蔵・試飲スペース、3階のレストランでは町内産ワインを提供する――。そんな姿が町の広報誌でも紹介された。

 しかし、構想実現には多額の経費がかかることがわかり、町が所有する建物の改修内容や費用について、町と地域商社の間で合意に至らず白紙になった。22年12月の町議会で町長が説明すると、議員から「町民の税金を使ってやる事業なので、もっと行政は反省をしていただきたい」などの声があがった。

 その後、23年7月に町が100%出資する河北町べに花の里振興公社が管理運営を始め、翌8月に3階レストランが開店。今年4月から振興公社が指定管理者となり、リニューアルオープンした。

 一方で、道の駅は開業から30年が経過し、鉄筋コンクリート造りの建物は耐用年数が残り十数年という難題が待ち受ける。

 近い将来、現在地での継続か、移転するのかなどの本格的な検討が必要になる。町議会では、産直や温泉施設がある具体的な場所をあげ、移転を検討しないのかを問う質問が出たこともある。

 現時点で町は、今後十数年を想定して観光や地域活性化に生かす考えで、新装開業では1階を自動ドアにしたり、入り口や天井を修繕したりするなどの改修にとどめたという。

 町商工観光課の軽部広文課長は「4階建てという高さと立地の良さがあり、最上川や周囲の山々などを見渡せる眺望が大きな特長」と説明。4階の展望台は閉鎖中だが、「インバウンドも見すえ、より景色を満喫してもらえる仕掛けや工夫をしていきたい」と話す。(坂田達郎)

 〈道の駅〉1993年に国の登録制度が始まり、全国に1200カ所超ある。山形県内は23カ所で、新たな整備計画も進む。市町村などが設置し、民間事業者や第三セクター、自治体などが運営する。当初は休憩場所や道路情報提供の役割が中心だったが、特産品販売など個性を出して人気を集め、目的地になる施設が増えた。近年は災害時の救援活動拠点や避難所などの防災機能が強化されている。

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