食の力で村おこし 料理教室の先生が地域活性化起業人に 神奈川で初

中島秀憲
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 神奈川県清川村が、県内の自治体で初めて総務省の「地域活性化起業人」を受け入れた。民間企業のノウハウを地域にいかすための人材派遣制度で、国内外で料理教室を展開する「ABCクッキングスタジオ」(東京)の社員1人が4月に着任した。村民の健康増進や、地元食材を使った特産品の開発などを目指す。

 第一号として派遣されたのは小澤明美さん(36)。村の子育て健康福祉課で働く。愛川町出身で、栄養士の資格を持つ。平塚市海老名市東京都町田市などで料理教室の講師を務めてきた。今回、自身の子育ても考慮して、自然豊かな清川村での仕事に手を挙げたという。「緑にあふれた村の風景に心が癒やされる。季節ごとの野菜や(村のブランド豚)清川恵水ポークなど魅力的な食材も多く、それらを生かして乳幼児から高齢者の食育セミナーや健康レシピの開発に取り組みたい」と意気込む。

 村役場にとって栄養士の常勤は初めてのことで、期待も大きい。「外部への委託とは違い、役所の中に入ってアイデアを発信してもらうことで、より活性化につながるのではないか」(政策推進課)。任期は1年の予定だが、延長する可能性もあるという。

 ABCクッキングスタジオは昨年度、全国へ8人の「起業人」を派遣した。毎月リモートで報告会を開き、情報交換しているという。小澤さんは成功例を参考にしながら、「旅行者が片手で食べられるメニューや、簡単に作れる防災食なども考えたい」と意欲的だ。

 総務省によると、地域活性化起業人は2014年度に「地域おこし企業人」としてスタート。初年度は17市町村から申請があり、企業からの派遣は22人にとどまったが、その後は年々増加。23年度は449市町村に計779人が派遣された。

 派遣元の企業は旅行会社や航空会社、デジタル関連企業など多岐にわたる。国からは特別交付税として、1人当たり最大で年間560万円が自治体に支給され、自治体が企業に派遣の費用を支払う。

 制度を活用する自治体が急増している背景について、総務省の地域自立応援課は「自治体は専門家を求めている。企業の側では、地方で地域に貢献したいという社員が増えているようだ」と分析している。(中島秀憲)

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