日本一逃した佐賀のノリ養殖 AI管理で巻き返しへ

野上隆生
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 2季連続で不作に苦しんだ佐賀県産ノリの今季の販売枚数は最終的に9億8784万枚、販売額は223億1298万円となった。19日に福岡県柳川市で佐賀、福岡、熊本3県の漁協と漁連などによる合同入札会があり、販売枚数や販売額が確定。まだ入札会を残す兵庫県に枚数、額ともに及ばず、目標だった日本一奪還は果たせなかった。

 県有明海漁協によると、今回の入札会は秋芽網から数えて今季通算9回目。出品枚数は160万6900枚と少なく、販売額も3347万円ほどだった。

 全国漁連のり事業推進協議会の15日現在のまとめでは、兵庫県の販売枚数が11億1348万枚、販売額が235億5342万円と、枚数、額のいずれも佐賀県を上回り、全国1位。佐賀は兵庫に次ぐ2位だった。

 県有明海漁協によると、今季の養殖が始まった直後の秋芽網ノリは好調な出だしだったが、すぐに赤潮が発生。少雨で河川からの栄養塩の流入も少なく、栄養塩不足が深刻になった。

 年が明けても少雨による栄養塩不足は続き、消えない赤潮にも悩まされた。このため、冷凍網を張る時期が例年より半月ほど遅れ、入札会が1回できなくなる前例のない事態となった。

 2、3月の降雨で持ち直したものの、海水温上昇で病気も発生。ノリ業界では「雨がもっと早く降ってくれたら、もう少し採れたはず」と、天候に左右された今季の苦しい状況を恨む声が聞こえた。

 最終的に、不作だった昨季よりも8千万枚程度増えたものの、「大凶作」と言われた2000年秋から01年春にかけての漁期を82万4500枚下回り、2年連続で10億枚を切る事態となった。

 また、県南部の支所では、ノリの色落ちが激しく早めに網を撤去したため、入札会に出品できない回もあるなど、地域格差は深刻さを増した。

 販売枚数の低迷に対して、販売額は今季の目標だった227億5千万円にわずかに及ばない水準に達した。全国的な品薄傾向で、平均単価は22.59円と、高値だった前季よりさらに4.11円も上がった。価格高騰による今後の消費者のノリ離れを心配する声が出るほどだ。

 県は、海底耕耘(こううん)や二枚貝の放流といった従来の対策に加え、4150万円をかけて、赤潮などに対応する新たな事業を今年度始めている。

 一つは、赤潮を引き起こす植物プランクトンの増減の予測の精度を上げること。これまで人間が顕微鏡で観察し、色や形などから予測していたが、機器を使って数値化し、より客観的に判断できるようにする。もう一つは、ノリ漁場の30カ所にブイを浮かべて潮の流れを確実に捉え、人工衛星のデータも使い、赤潮が出る時期と終息する時期を予測すること。

 データの精度を高め、AIも使えば、赤潮を避けて網を張るなどの養殖管理が可能になる。県水産課では、「主要なノリ生産県としての役割を果たし、早く以前の生産量に戻したい」としている。野上隆生

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