民間研究機関「人口戦略会議」が24日に発表した全国の自治体の持続可能性の分析結果では、岡山県内27市町村のうち10市町が「消滅可能性自治体」と指摘された。一方で岡山市と倉敷市の間に位置する早島町は県内では唯一、「自立持続可能性自治体」と判定された。(水田道雄、礒部修作、大野宏)

 県西部の井原市は、今回新たに「消滅可能性自治体」と判定され、「自然減対策が必要」「社会減対策が極めて必要」と指摘された。市の担当者は「ただ残念である」と率直な気持ちを表した。

 市内に大学や短大などの高等教育機関がないため、市外に進学する人も多い。市によると、毎年約250人が高校を卒業するが、そのうち約7割が市外に進学するという。

 若い世代の呼び込みをめざし、同市は2015年度に「総合戦略・人口ビジョン」を策定。市内に移住して住宅を新築、または分譲住宅を購入した世帯には100万円の補助金を出している。18歳までの医療費も無料にした。

 市の担当者は「人口減はどこの市町村も抱える課題。時代にあった行財政規模で取り組みを進めるしかない」と話す。

 10年前の前回調査に続いて「消滅可能性自治体」と判定され、若者女性人口の減少率がさらに悪化した新見市。利用者の減少から存廃問題で揺れるJR芸備線の区間も抱える。市総合政策課は「人口減少は市の最大の課題。引き続き対策に力を入れる」としている。

 若年女性人口減少率が岡山県内最高の62.7%とされた備前市。今年度は「妊娠、出産、子育てすべてのライフステージに応じた切れ目のない子育て支援」を目標に掲げている。出産・子育てや家庭育児への応援金を設け、子ども医療費や保育料、給食費の無償化などを進めているが、厳しい数字を突きつけられた。

 市の担当者は「10年前の調査結果である程度は予測していたが、県内ワーストとまでの認識はなかった」と危機感を新たにした。

 一方で、消滅可能性自治体から「脱却」したと評価されたのが奈義町だ。金田知巳副町長は「これまでの子育て支援策など、町づくりが実を結びつつあるのだろう」と喜んだ。

 2012年から「子育て応援宣言」を掲げる同町はいま、7カ月~4歳の子どもを保育園などに入園させず、自宅で育てる家庭には1人につき月額1万5千円を支給する。高校就学支援や大学生に町独自の育英金を貸し付ける制度もある。

 1人の女性が生涯に産む見込みの子の数を示す「合計特殊出生率」は21年に2.68で、全国の1.30を大きく上回った。「奇跡の町」とも呼ばれ、昨年2月には岸田文雄首相も視察に訪れた。

 県内の自治体では唯一、「持続可能」と判定されたのが早島町だ。人口1万2764人(1月1日時点)で、10年前から500人余り人口が増えた。

 岡山市と倉敷市の中間に位置する。四国、関西、九州方面へのアクセスの良さを生かし、企業の物流拠点の誘致が進んでおり、町の担当者は「岡山、倉敷の両市で働く人たちのベッドタウンになっている」と分析する。

 23年の町内転入者574人に対し、転出者は431人で、記録がある11年以降、転入者数と転出者数の差が最大になった。

 担当者は「この状況を維持していきたい」と話しており、18歳までの医療費や、幼稚園・小中学校の給食費の無償化などの少子化対策は続ける方針だという。