災害から文化財を守れ 「文化財シェルター」設置を提唱

角津栄一
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 地震や火災、水害など各地で起きる災害では、人命だけでなく地域の歴史や伝統文化を伝える文化財も被害を受ける。博物館や大学、行政などが中心となって被災地で文化財のレスキュー活動に乗り出す中、群馬県内で3月、歴史研究者や行政の担当者らが集い、歴史文化資料保全首都圏大学協議会が開かれた。

 「群馬県域における資料保存・継承の現在」をテーマに、県文化財保護課の担当者が文化財防災の取り組み状況を報告。県立女子大学群馬学センターの簗瀬大輔教授は「文化財シェルター」の設置を提唱した。行政施設の未利用スペースを活用して被災した文化財を保管し、大学、研究者、市民らがレスキュー活動をする仕組みだ。災害発生時にスムーズに連携して活動できるよう、あらかじめ関係機関で協定を交わす必要性も指摘した。

 文化財保護法の2018年改正で、都道府県による文化財保存活用大綱の策定、市町村による文化財保存活用地域計画の作成が制度化された。群馬県は文化財保存活用大綱、文化財防災ガイドラインを策定し、内容をわかりやすく伝える文化財防災パンフレットも作成。「地域で文化財を守る」意識の向上を図っている。

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 栃木県では、地域の歴史文化資料が被災した時に民間団体「とちぎ歴史資料ネットワーク(とちぎ史料ネット)」がレスキュー活動にあたっている。設立のきっかけは2019年の台風19号だ。

 河川が氾濫(はんらん)し、県内でも浸水被害が広がった。阪神淡路大震災を機に被災した資料のレスキューに取り組んできた「歴史資料ネットワーク」(神戸市)の支援を受け、地元研究者や行政の文化財保護担当者も加わって、ぬれた紙の史料をキッチンペーパーや新聞紙にはさんで水を吸い取り、乾燥させて修復した。

 こうした活動を通して20年にとちぎ史料ネットを設立。市民向けに公開講座を開き、資料保全の意義などを伝えている。運営委員で、栃木県鹿沼市で文化財保護を担当している堀野周平さんは「地域の歴史は、いまを生きる私たちにとって心のよりどころ。地域づくりに歴史は欠かせません」と話す。(角津栄一)

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