「消滅可能性」9市町村 「悪化」や「改善」、実態に濃淡

奥正光 星乃勇介
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 有識者でつくる人口戦略会議が24日に公表した報告書で、宮崎県内では26市町村のうち9市町村が「消滅可能性自治体」とされた。10年前の「消滅可能性都市」に続くもので、市町村の人口減少の傾向は変わらない中、今回「悪化」した市町村もあれば、「脱却」した市町村もあった。

 今回の報告で、いずれ消滅の可能性があると指摘されたのは、2020年から50年までに20~39歳の女性人口が50%以上減少すると推計された自治体。県内では、串間市、えびの市、高原町国富町、諸塚村、椎葉村、美郷町、高千穂町、日之影町の9市町村が該当した。10年前の「消滅可能性」から新たに加わった市町村はなかった。

 県によると、9市町村のうち、えびの市、諸塚村、美郷町は10年前より減少率が「悪化」。その他の6市町村は「改善」していたという。

 一方で、日南市小林市、綾町、西米良村都農町五ケ瀬町は、10年前の「消滅可能性」の指摘から「脱却」していた。

 河野俊嗣知事は25日の記者会見で、10年前から減少幅が改善しているかどうかも注目すべきだと指摘。日之影町を例に挙げ「18ポイント改善しており、これまでの取り組みに手応えを感じることができるのでは。市町村ごとに分析し、今後に生かす使い方をすべきではないか」と述べた。(奥正光)

     ◇

 24日に人口戦略会議が公表した県内の「消滅可能性自治体」9市町村のうち、県北が5町村を占めた。前回より減少率が悪化し、事実上「消滅可能性が高まった」のも3市町村ある。自治体の悩みは深い。

 今回の調査は、2020年から50年の30年間で、子どもを産む中心世代と見込まれる20~39歳の女性が、どのくらい減るかに着目した。

 県内最大だったのは諸塚村(72.6%減)だ。この結果に、村の担当者は「人口流出は抑制できているのに」と驚く。誕生祝い金の支給、給食費無償、通学・通園補助と子育て支援は多彩だが、「V字回復は望めない。中山間地はどこも厳しいが、仕事も生活も充実した村だということを訴えていくしかない」という。

 2位が美郷町(65.3%減)。高齢化率が53.1%(2023年10月)と県内最高となる中、移住・定住策に力を入れてきた。町の担当者は「即効薬はない。5年後、10年後に実を結ぶと信じ、地道にまちの魅力を高めていく」と話す。

 減少率の「悪化」は、町や村に比べて人口が多い市にも押し寄せている。県内の9市で減少率が最大だったえびの市(54.5%減)の担当者は「改善しているかと思ったが、これが現実。結果を分析し、何が足りなかったのかを見極め、抑制に向けて頑張るだけだ」と語った。

 「消滅可能性」を脱却した6市町村のうちの一つ、五ケ瀬町は移住・定住に向けて空き家をリフォームしたり、町営住宅をあっせんしたりしてきた。「朗報」にも、担当課は警戒感を緩めない。「人口減に歯止めがかかったわけではない。対策は打ち続けていく」(星乃勇介)

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