2018.08.06

桜花学園戦の完敗は、札幌東商業のキャプテンが抱く夢の後押しとなるか

女子3回戦、公立校の札幌東商業が強豪桜花学園に挑んだ [写真]=兼子慎一郎
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

「平成30年度全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会(インターハイ)」の女子3回戦で対戦した桜花学園高校(愛知県)と札幌東商業高校(北海道)のロスターを見ると、両校に同じ中学校出身の選手がいることがわかる。桜花学園の岡本美憂と、札幌東商業の山田月南、葛城瑠奈、大林柊はそろって札幌市立東月寒中学の出身なのだ。学年順に並べると、山田が3年、岡本と葛城が2年、大林が1年という関係である。インターハイ前、山田は愛知にいる岡本と連絡を取った。

「がんばって、桜花と当たるまで勝ちあがるからね」(山田)

「自分も桜花で成長した姿を見せられるようにがんばります」(岡本)

 そんなやり取りだったという。

 果たした3回戦で対戦した東月寒中の同窓生たちは、桜花学園が101点、札幌東商業が56点というスコアで勝敗を決した。

 山田が言う。

「もちろん岡本に負けたくないという気持ちはありました。でもそれ以上に彼女の前で1本でもいいからシュートを決めたかったです。ポジションが異なるのでマッチアップすることもなく終わってしまったけど、お互いが別の高校に進んでも、本気で対戦できたことはすごくうれしかったし、楽しかったです」

 試合後、大林も岡本に「がんばってくださいね」と声を掛けていたが、たとえ進む道が分かれたとしても、同じチームで戦ってきたチームメートは、いつまでもチームメートのままなのである。

 山田にはもう一つ、エピソードがある。

 彼女は小学生の時から札幌東商業のバスケットに憧れて、同校で北海道チャンピオンの札幌山の手高校(北海道)を倒したいと目標に掲げていたのだ。

「もちろん札幌山の手に入学すれば毎回全国大会に出ることもできたと思うんです。でも私は自分でチームを勝たせるというか、公立高校でもできないことはない、公立高校でやってやるんだという気持ちで札幌東商業への進学を決めました。もちろんバスケットスタイルも小学生の頃から憧れていました。ディフェンスをがんばって、オフェンスはチームみんなで遂行する。華麗さはないかもしれないけど、泥臭く、一生懸命なバスケットスタイルに憧れたんです」

 すぐ近くにも全国トップレベルの高校がある。でもあえてそこを選ばず、むしろ自分がその高校を倒してやるんだという意気が今年の札幌東商業を全国へと導いた。チームを率いる永野達矢コーチも「(山田は)今までのキャプテンと意識が違います」と認めるほどだ。

 桜花学園には敵わなかったが、インターハイという舞台で真剣勝負ができたことは山田にとっても、札幌東商業にとっても大きなステップになるはずだ。

 インターハイ予選では18点差で敗れた札幌山の手にどこまで迫れるか。いや、迫るだけでは物足りない。桜花学園戦を経験した山田は今度こそ幼い頃からの夢を実現させるつもりでいる。

文=三上太

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