バイデン氏、気候変動対策の「勝負の10年」 サミットでCO2削減の新目標を発表

マット・マグラス BBC環境担当編集委員

Joe Biden

アメリカのジョー・バイデン大統領は22日に開幕したバーチャル気候変動サミットで、今が気候変動問題への取り組みにおける「勝負の10年」だと述べた。

バイデン大統領は、アメリカが2030年までに二酸化炭素(CO2)排出量を2005年比で50〜52%削減すると約束。これまで、2025年までに26~28%削減するとしてきた目標を、2倍近くに引き上げた。

気候変動サミットには40の国と地域などの代表が出席したが、世界最大のCO2排出国のインドと中国からの新しい取り組み提示はなかった。

バイデン大統領はサミットの開会の挨拶で、今が気候変動問題への取り組みにおける「勝負の10年であり、気候危機による最悪の結果を避けるための決断を下す時だと、科学者たちが言っている」と述べた。

「我々は地球の気温上昇を摂氏1.5度に抑えるよう、努力しなければならない。1.5度を超えた世界では、激しい火災や洪水、干ばつ、熱波、ハリケーンが今以上に頻繁に起こることになる。地域社会を引き裂き、命と生活を奪うことを意味する」

バイデン氏は気候変動に対して直ちに行動を起こすことが、道徳的にも経済的に必要不可欠だと述べた。

また、アメリカの新たな炭素削減公約について言及し、「(気候変動の)兆候が現れているのは紛れもない事実だ。科学は否定できないし、何もしないことによる代償は膨れ上がっている」と述べた。

「アメリカは待っていない。行動すると、決意している」

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(アメリカ、ロシア、ドイツ、中国、イギリス、フランス、ウクライナ、日本、ポーランド、カナダの1959年~2015年までの炭素排出量の推移)

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スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリさんは22日、米下院の監視・改革委員会の公聴会にオンラインで出席し、気候危機にさらに取り組むよう世界の指導者たちに求めた。

「あなた方と違って、私たちの世代は戦わずして諦めることはしません」とトゥーンベリさんは述べた。「権力者がいつまで逃げきれると本気で考えているんですか?」。

イギリスは今年11月にスコットランド・グラスゴーで開催予定の第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の議長国として、重要な役割を担っている。

ボリス・ジョンソン英首相はバイデン氏の温室効果ガス削減に関する発表について、気候変動対策の「流れを一気に変える」ものになるとした。

「我々は共に世界中で取り組むことが出来る。富裕国が一丸となり、2009年にすでに合意した、気候変動対策への年1000億ドルの拠出を上回ることを意味する」

アメリカの生活様式に大変化

バイデン政権発足後の数カ月間、気候問題は同政権にとって特に重要なテーマだった。

バイデン政権は気候変動対策の国際的取り決め「パリ協定」への復帰や、22日のサミット開催だけでなく、自分たちがいかに真剣か世界に確信してもらうため、力強い誓いを立てている。

バイデン氏に50%以上のCO2排出量削減を目指す用意がある―――。このことは、多くの科学者や活動家にとって嬉しい驚きだったはずだ。

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画像提供, Robert Alexander

米環境保護基金のナサニエル・コヘイン氏は、「バイデン大統領は10年後までに2005年比で(CO2)排出量を50〜52%削減するという大胆な目標を発表することで、気候危機への対応が必要な時期にこの緊急事態に応えた」と述べた。

しかしこの新たな公約は、アメリカ人の生活様式に大きな変化をもたらすことを意味する。石炭は電力構成から消え、ガソリンを大量に消費する自動車やトラックは電動化しなければならない。

サミットではアメリカ以外にも、カナダや日本、韓国などが新たな目標を打ち出した。

しかし、2030年までに炭素の排出量を40〜45%削減するとしたカナダに対しては、活動家らからすぐに批判が上がった。

世界資源研究所(WRI)のヘレン・マウントフォード氏は、「カナダの2030年までに実現するとした新たな削減目標は、前回よりも強力ではあるものの、危険なレベルの温暖化を回避するには不十分だ」と指摘した。

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画像提供, STR

画像説明, 中国の習近平国家主席

こうした中、日本の菅義偉首相は「わが国が世界の脱炭素化のリーダーシップをとっていきたいと考えている」と述べた。

これまでわずか26%削減としてきた削減目標について、「2050年カーボンニュートラルと整合的で、野心的な目標として、わが国は2030年度において、温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指します」と、菅首相は述べた。

韓国も新たな目標を掲げ、海外での石炭火力発電所建設への融資を停止するとした。

一方で中国は、CO2削減に関する新たな目標は打ち出さず、新型コロナウイルスで落ち込んだ経済の回復に伴って再び増加するとみられる石炭の消費については今後数年で削減に取り組んでいくとした。

習近平国家主席は「石炭火力発電プロジェクトを厳しく管理していく」、「第14次5カ年計画期間中(2021~2025年)に石炭消費量の増加を厳しく制限し、第15次5カ年計画期間中(2026~2030年)に段階的に削減していく」と述べた。

国際エネルギー機関(IEA)によると、新型ウイルスの感染拡大で落ち込んだ経済が回復しつつある中、世界の石炭消費量の約半分を中国が占めているという。

インドのナレンドラ・モディ首相は同国の1人あたりのCO2排出量は世界平均より60%も少ないと強調。気候変動の抑制において、生活様式の変化がより大きな役割を果たすはずだと述べた。ただ、排出量抑制について新たな目標は示さなかった。

バイデン政権はオーストラリアやブラジルなど、気候変動対策に遅れをとっている国に対して対応を求めている。