想像力を伸ばすには、「余裕・余白」を持つこと ボーク重子さんに聞く!これからの子どもを幸せにする「非認知能力」の育み方 ~Lesson11 想像力

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ライフコーチのボーク重子さんに、子どもの「非認知能力」の育み方について、連載でお伺いしています。第11回の今回は、経験したことがないことに対しても思いを巡らす力、「想像力」についてのお話です。

この記事のポイント

【保護者のかたのお悩み】
Q.子どもが図工が苦手です。造形教室などにも連れて行ったのですが、他の子は材料をうまく使って工作ができるのに、うちの子だけができずに、絵も決まったものしか描けません。考える力がついていないからでしょうか。
どうすれば子どもの想像力を伸ばすことができますか。

想像力があれば、可能性や選択肢が広がる

「想像力」とは、自分が経験したことがないことに対して、思いを巡らす力です。特に今は不透明で変化が激しい時代です。「これしかない」とひとつの答えに固執せずに、想像力を使い、柔軟に考えることで、可能性も選択肢も増やすことができます。
子どもの想像力を伸ばすには、「何でもあり」の自由な環境をつくってあげるとよいと思います。そうすることで、子どもは自由に発想し、自分の考えを表現できるようになります。親として大事なことは、子どもの発想を否定したり、規制したりしないことだと思います。とにかく自由であることです。

私がアメリカで娘の幼稚園を選んだ時も、「子どもの想像力を伸ばせる場所か」ということを重視しました。いくつかの幼稚園を見学しましたが、毎回アートルームを必ずのぞき、部屋に飾ってある子どもたちのアート作品を見て、自由に発想ができる場所かということを確認していました。娘に選んだ幼稚園では、何を作るかの「テーマ」は決まっていましたが、あとは何を使いどんなふうに表現してもよかったので、子どもたちは自分が思うままに、それぞれ作品づくりに没頭していました。先生も作り方を指導するのではなく、一緒にアートを楽しむというスタイルで、とても自由でした。

「規制しない」「否定しない」ことがおすすめ

図工が苦手なお子さまであれば、それを無理やりやらせるのではなく、好きなことを見つけて、そのことをたくさんやらせてあげたほうがよいと思います。好きなことであれば、意欲や好奇心もわいてくるでしょう。また、うまくできなくても、同じ絵しか描けなくてもよいのではないでしょうか。
大事なことは、その子自身を肯定してあげることです。

日本の幼稚園で、チューリップの色の指導があるという話を聞いたことがありますが、何色だっていいはず。規制をかけずに、自由な世界、自由に思いを巡らせることが大事だと思います。
日頃まったく制約がなく暮らすというのはなかなか難しいのですから、アートの世界くらい、自分の想像の世界で、自由に何でもやってよいというほうが、子どもの想像力は伸びると思います。

質問と疑似体験で、想像力を鍛える

たとえば親子でテレビを見ている時に、「今こういうふうに番組は終わったけれど、あなただったらどうする?」「どう思う?」と子どもに聞いてみることは、想像力を鍛える練習になります。
与えられた結末だけが唯一の答えではなく、自分自身も考えてみる習慣がつくからです。
また映像でもよいですが、目から入ってくる情報は影響が大きいものです。本のほうが、その文字をどう処理してイメージを描くか人それぞれのため、想像力を鍛えるという点ではよいかもしれません。

映像にしろ、本にしろ、疑似体験をたくさんすることで、いろいろな知識を得ることができます。想像するには、知識も重要です。
たとえば、この国では戦争をしているから、親子が一緒に暮らせない。病院がない。そういったことも、本や新聞を読んだりニュースで目にすることで、知識を得ることができますし、そういった知識があるからこそ、想像を巡らし、相手の立場を理解し、共感することができるのです。

また、想像したことを、何でも言える環境が家庭にあるということも大切です。
想像の話なので、何を言ってもまちがいではありません。子どもが感じたことを否定せずに、「もっと教えて!」と引き出してあげることで、想像の世界はどんどん広がっていくでしょう。

そうやって、考えを広げる体験をくり返すうちに、子どもは「こうしたらどうなるかな」「これ以外の方法はないかな」と考える習慣がつき、想像力を伸ばしていくことができます。

想像力を引き出すには「余裕・余白」が大事

また想像力を引き出すもうひとつの鍵は、「詰め込まない」ということです。
余裕・余白があることで、人は「考える」ことができます。
「あれをやらなくてはいけない」、「これもやらなくてはいけない」という状態だと、自由に想像する余裕・余白がなくなってしまいます。

また、「こうしなさい」「ああしなさい」と親が命令・指示ばかりしていると、子どもは自分で考えることをやめてしまいます。子どもが「何で?」と聞いてきた時も、答えを教えるのではなく、「どう思う?」と聞いてあげることで、子ども自身が考え、想像力が伸びるでしょう。

今の時代、スマホやタブレットですぐに検索ができるので、子どもに答えを教えることは簡単にできます。しかし、そうすることで、子どもたちは自分で考えて答えを導き出したり、思いを巡らせたり、他の見方を考えたりすることができなくなってしまいます。

コロナ禍で顕著になりましたが、社会が混乱した時に、どうやって生き抜くか。
ひとつの答えに固執せずに、柔軟性や想像力を持つことが極めて大事なことだと、誰もが認識したことでしょう。これからますます「自分だったらどうするか」と常に思いを巡らす、想像力が重要になっていきます。

まとめ & 実践 TIPS

子どもの想像力を伸ばすためには、余裕や余白を持つことが大事です。子どもから何か質問をされた時も、すぐに答えを教えるのではなく「自分だったらどうする?」「どう思う?」と、こちらからも質問をすることで、子ども自身に考える習慣がつき、想像力を伸ばすことにつながるようです。

撮影/奥本昭久


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プロフィール


ボーク重子

ICF会員ライフコーチ。Shigeko Bork BYBS Coaching LLC代表。米ワシントンDC在住。30歳の誕生日を前に渡英、ロンドンにある美術系大学院サザビーズ・インスティテュート・オブ・アートに入学。現代美術史の修士号を取得後、フランス語の勉強で訪れた南仏の語学学校で、米国人である現在の夫と出会う。1998年渡米し、出産。子育てと並行して自身のキャリアを積み上げ、2004年にアジア現代アート専門ギャラリーをオープン。2006年、ワシントニアン誌上でオバマ元大統領(当時は上院議員)とともに、「ワシントンの美しい25人」の一人として紹介される。一人娘であるスカイは2017年「全米最優秀女子高生」コンクールで優勝し、多くのメディアで取り上げられた。現在は、全米・日本各地で《非認知能力を育む子育て》《新しい時代のキャリア構築》についてコーチングと講演会を開催している。著書に『世界最高の子育て』(ダイヤモンド社)、『「非認知能力」の育て方』(小学館)など shigekobork.com 東京FMラジオ局のAuDee (Iphoneアプリ)、マイスタジオにて「ピンクdeワオ:自己肯定感コーチング」毎週月曜日から金曜日朝6時配信中。

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