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夫は死んだのに、義母との同居が続いて…「監視生活」に限界を迎えた女性の決断
写真はイメージです(Fast&Slow / PIXTA)

夫は死んだのに、義母との同居が続いて…「監視生活」に限界を迎えた女性の決断

「義母に家から出ていってもらうことはできますか」。夫が亡くなった後も義母と同居し続けているという女性が、弁護士ドットコムに相談を寄せています。

相談者は夫が亡くなった後、夫名義の家で未成年の子ども2人と義母(60代)と暮らしています。義母は何をするにも口出ししてくるため、常に「監視されている」状態で気が休まらない日々を送っているそうです。

当初、義母は「自分が家を出て行く」と言っていたものの、あるときから別居を拒否するようになりました。相談者が「別居後の経済的な支援(毎月の家賃か、中古でマンション等を買うならその費用を出す)をする」と話しても、別居に応じてもらえません。

家は夫が独身時代に建てたもので、義母は建築当初から住んでいたそうです。夫の遺言はなく、遺産分割協議もまだ終えていませんが、相談者は家を相続できるのではないかと考えています。

相談者は1日でも早く子どもたちと心休まる日々を送りたいと望んでいます。義母に家から出ていってもらうことはできるのでしょうか。

加藤泰弁護士による解説をお届けします。

●義母を強制的に追い出すことはできる?

ーー義母に家を出ていってもらうことはできますか。

結論からいえば、難しいと思います。

夫の遺言がなく、お子さん2名との遺産分割協議を終えていないのであれば、夫の死亡に伴い、家は相談者とお子さん2名による遺産の共有となっていると思います。かたや義母は相続人ではありませんので、家については家の所有権や共有持分はないでしょう。

しかし、法律上は「相続人」ではないからといって、夫と結婚する前からその家に住んでいる義母を追い出すのは、義母にとってかなり酷な話です。

家族間のことですので法的に突き詰めて考えにくいこともありますが、もしも裁判となったら、居住の継続を認める何らかの合意の存在が認められたり、退去を求めることが「権利の濫用」と評価される可能性があります。

義母が相談者に対して、同居に堪えない行動を尋常ではないレベルでおこなっているような場合は別かもしれませんが、ご相談の内容では、追い出すことは難しいと思います。

●義母を扶養しなければならないのは誰?

ーー夫が亡くなった後、「嫁」と「姑」は法律上どのような関係になるのでしょうか。

民法は、3親等内の姻族(結婚したことによってできた親戚)も親族と定めています。夫が死亡しただけでは姻族関係は終了しませんので、「嫁」と「姑」は引き続き民法上の親族関係にあります。

ーー義母の「扶養義務」は誰が負うことになるのでしょうか。相談者によると、家の近くに夫の弟も住んでいるそうです。

「扶養義務」は直系血族及び兄弟姉妹が負担するのが原則です。相談者の場合、一時的には義弟が「扶養義務」を負うでしょう。

ただし、相談者が家を出てもらう条件として生活費を払うことを約束したのであれば、そのような契約が成立したものとして、相談者が支払義務を負うと考えられます。

また、たとえば義弟が生活に困窮しており、他方で相談者が非常に裕福であるなどの事情があれば、嫁姑間といった3親等内の姻族においても「扶養義務」が発生すると考えられます。

●義母との関係は一生つづく?姻族関係を終わらせるには?

ーー夫が亡くなった後も義母と縁を切ることは難しいのでしょうか。

配偶者が亡くなった後に届出をおこなえば、姻族関係は終了させることができます。この届出をおこなえば民法上の親族ではなくなるので、「扶養義務」を免れることができます。

気が合わない者同士が同居すれば、大なり小なりのトラブルは避けられません。水道光熱費などの負担割合の問題や、家の使い方をめぐって対立することもあるでしょう。

相談者が同居している義母に精一杯尽くしたとしても、必ずしも相続人となるわけではありません。義母が遺言で相談者に財産を遺す旨の記載をしていないと、相続の場面で報われない結果になり、相続人とトラブルになることも考えられます。

(弁護士ドットコムライフ)

プロフィール

加藤 泰
加藤 泰(かとう やすし)弁護士 山下江法律事務所
早稲田大学法学部卒業、広島弁護士会所属 広島弁護士会広報室室長代理、広島商工会議所青年部会員 Twitter:https://twitter.com/39katoyasushi

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