マイナス金利の深堀り余地「十分ある」、緩和方向意識-日銀総裁
伊藤純夫-
国債買い入れがこれ以上できないことない、ETFも必要-国会答弁
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追加緩和は副作用に配慮、金融システム不安定化リスク大きくない
日本銀行の黒田東彦総裁は19日の参院財政金融委員会で、現行マイナス0.1%の政策金利について深掘りの余地は十分にあると改めて表明するとともに、市場残高の5割程度を保有する国債の買い入れ増も可能との認識を示した。
日本の経済・物価の先行きについて、海外経済を中心に引き続き下振れリスクに注意が必要とし、「日銀は緩和方向を意識した政策運営が適当な状況にある」との考えを表明。日銀が重視する2%の物価安定目標に向けたモメンタム(勢い)は「維持されている」としながらも、「目標実現に時間がかかっており、残念」と語った。
物価目標の実現に向けて「在任期間と関係なく最大限努力する」とし、物価上昇のモメンタムが損なわれる恐れが一段と高まる場合には「政策金利の引き下げを含めて追加緩和を躊躇(ちゅうちょ)なく検討する」との意向を示した。同総裁の任期は2023年4月まで。
緩和手段は長短金利目標の引き下げ、資産買い入れの拡充、マネタリーベースの増加ペースの加速のほか、その組み合わせなど「さまざまな余地がある」とした上で、マイナス金利の深堀りも「余地は十分にある」と説明した。
市場残高の5割程度を保有する国債については、「まだ市場に十分あり、買い入れがこれ以上できないということはない」とし、現時点で国債買い入れの限度も考えていないと述べた。指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れも「リスクプレミアムの過度な拡大・変動を防ぐ役割があり、引き続き必要な措置」と指摘。日銀の保有は株式市場全体の5%程度に過ぎず、「市場機能に影響を与えていることはない」との見解を示した。
もっとも総裁は、追加緩和措置を検討する際には、政策の効果と副作用を考慮して「最適な組み合わせによる政策をとる」との考えも表明。低金利の長期化が金融機関収益の圧迫を通じて金融システムが不安定化するリスクがあるが、総裁はそうしたリスクは「現時点では大きくない」と語った。
総裁は、10月の金融政策決定会合で決めた新たな政策金利のフォワードガイダンス(指針)について、「物価安定の目標に向けたモメンタムが損なわれる恐れに注意が必要な間、政策金利について現在の水準を維持する、あるいは状況によっては現在の水準よりも引き下げる方針を明確にした」と説明した。
総裁は同委員会で、半期に一度の「通貨および金融の調節に関する報告書」の概要説明と答弁を行った。