コンテンツにスキップする
Subscriber Only

英総選挙でEU離脱はどうなる-想定される4つのシナリオ

普通の総選挙ではない。2週間後に行われる英総選挙は次の政権だけでなく、欧州連合(EU)離脱の行方を決する。

  この結果次第で、合意なきEU離脱、国民投票の再実施、EU残留まで幅広い可能性が生じる。想定される4つのシナリオを以下に示す。

保守党が過半数獲得

選挙結果:ジョンソン首相率いる保守党が325議席以上を制して勝利

この選挙結果に至る筋書きは?:世論調査の結果通り、労働党が伝統的に強い地域でも保守党が議席を奪取。南部の有権者はEU離脱よりもコービン労働党党首嫌いを優先し、保守党に投票する。

EU離脱の展望は?:ジョンソン首相は自らがEUと結んだ離脱案を、年内にも議会で成立させようと速やかに動くだろう。保守党候補者は全員、この離脱案を支持すると誓約しているため、首相は駆け足で下院を通過させることが可能だ。英国は1月末でEUを離脱する。

これで落着か?:もちろん違う。ジョンソン氏はその後11カ月でEUとの間で通商協定をまとめることになる。保守党候補者による誓約はこれについてはカバーしていない。40議席以上の差を付けた過半数でない場合、一部の保守党議員がジョンソン氏により強硬な離脱を促そうとするリスクがある。

The Conservative Party Launch Their Election Manifesto

ジョンソン英首相(24日、ウォルバーハンプトン)

写真家:Dan Kitwood / Pool / Getty Images

ほぼ現状通り

選挙結果:保守党は議会で最大の議席数を維持するが、過半数には届かない

この選挙結果に至る筋書きは?:労働党地盤の有権者は結局、ジョンソン氏に信頼は置けないと見定め、同氏はメイ前英首相と同様に労働党の牙城を突き崩すことは難しかったと痛感する。保守党はEU離脱支持の強い地域で議席を得るものの、残留支持の地域では議席を失い、効果は打ち消される。

EU離脱の展望は?:これまでと同様の混乱がまた繰り返される。ジョンソン首相は辞任を拒み、野党も結束できない。新年の議会では、離脱期限のさらなる延期、ジョンソン首相離脱案の承認、2回目の国民投票、場合によっては再びの総選挙などを問う重要な採決が相次ぐ。一方で、1月31日の離脱期限は迫る。

労働党が政権奪取、しかし次期首相は不明

選挙結果:保守党は300議席を割り込む。労働党も議席を失うが、少数政党の支持を得て政権を奪取する。スコットランド民族党(SNP)が約50議席、自由民主党が30議席程度、無所属で出馬する元保守党の候補者数人が議席をそれぞれ確保する。

この選挙結果に至る筋書きは?:保守党は現有議席の確保に成功するが、他党から議席奪取を狙った選挙区で十分に勝てない。ジョンソン首相は中部で労働党から議席を奪うものの、期待したよりは少なく、スコットランドではSNPに敗れる。一部の選挙戦術が奏功し、自由民主党は南部の選挙区で保守党に一泡吹かせる。

EU離脱の展望は?:離脱期限のさらなる延期が予想される。ジョンソン首相の敗北は明白だが、誰が次の首相になるのか。自由民主党はコービン首相誕生を拒否し、労働党に別の首相候補を立てるよう迫り、この案に多くの労働党議員が私的に共感を示す。クリスマスのころはコービン氏支持派と反対派の攻防に。1月には何らかの形で新たな政権が発足し、さらなるEU離脱延期の模索に焦点が移り、今回は2回目の国民投票のための時間も割り当てられる。

コービン首相誕生

選挙結果:保守党は280議席に沈む。労働党は同程度まで獲得議席を伸ばし、スコットランド独立を巡る住民投票の再実施を認めることでSNPの支持を取り付け、コービン氏が首相に就任する。

Labour Party Leader Jeremy Corbyn Starts U.K. Election Campaign

コービン労働党党首

写真家:サイモン・ドーソン/ブルームバーグ

この選挙結果に至る筋書きは?:ジョンソン首相は信頼が置けず、保守党はEU離脱にしか関心がないとのコービン氏の主張を有権者が支持し、労働党が選挙戦終盤で追い上げる。同党の公共サービスへの支出拡大という公約が支持層の維持だけでなく拡大にも寄与する。

EU離脱の展望は?:コービン氏はEUと密接な関係を維持する合意を目指し新たな交渉に入る。EUはそうした方向を受け入れ、コービン氏はその合意案とEU残留の選択肢を並べ来年6月に国民投票を実施する。

原題:Four Ways the U.K. Election Could Play Out for Brexit(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE