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ソフトバンクGのファンド、クーパン上場で利益3兆円超えもー関係者

  • ビジョン・ファンド事業の利益は3四半期連続で過去最高の可能性
  • 韓国クーパンのIPO効果が利益の大半を占める見通し

ソフトバンクグループビジョン・ファンド事業からの利益が第4四半期(1ー3月)に3兆円を超えた可能性がある。複数の関係者への取材で分かった。

  情報が非公開のため、匿名を条件に語った関係者によると、第4四半期のファンド事業からの利益は250億ドル-300億ドル(約3兆2700億円)と見込まれ、3月にニューヨーク市場で株式を新規公開(IPO)した韓国の電子商取引大手クーパンの利益が大半を占めるという。ソフトバンクG全体の利益は不明だが、ブルームバーグの集計では1990年以降の日本企業の四半期利益としては最高になる。

  ソフトバンクGは5月12日に前期(2021年3月期)決算を公表予定。ビジョン・ファンドの広報担当者は利益動向についてコメントを控えるとしている。

  成長したスタートアップに巨額の資金を投じる孫正義社長の戦略はかつて非難を浴びたものの、世界的にIPOが好調の今はこれまでにない勢いを見せており、出資先が160を超すビジョン・ファンドは3四半期連続で最高益を更新する見通しだ。ブルームバーグのデータによると、21年のIPO規模は4月13日時点で2186億ドル。このペースが続けば、過去20年間で最大になる。  

IPOブームに乗るソフトバンクGのビジョン・ファンド

孫社長の投資事業は赤字から過去最高益へ

会社側公表データ

  クーパンのIPO規模は46億ドルと世界で今年2番目の大型上場となり、ソフトバンクGにとっては14年のアリババ・グループ・ホールディング以来、最高のリターンを記録した。今後も東南アジアの配車サービス大手のグラブ・ホールディングスや中国で配車サービスを展開する滴滴出行、シェアオフィスの米ウィーワークなどの上場が期待され、新たな投資回収機会が訪れている。

  ソフトバンクGは15年にクーパンに出資し、18年にはビジョン・ファンドが投資した。企業価値は50億ドルから90億ドルに増え、ブルームバーグのデータによると、全体の3割を超すソフトバンクGの保有株式は3月末時点で280億ドル超。クーパンの株価は3月末時点で公開価格と比べ4割上昇した。

  ジェフリーズ証券シニアアナリストのアツール・ゴヤール氏は、「クーパンはビジョン・ファンドにとってホームランだ」と指摘。後に続く出資先の上場にも「グッドニュースがあるだろう」としながらも、「ソフトバンクGの利益は評価益頼み」ともみている。

  ソフトバンクGは1月に出資先の配車サービス大手である米ウーバー・テクノロジーズ株の一部、20億ドル相当を売却し、第4四半期に売却益を計上する予定。3%の株式を保有する動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」の親会社である北京字節跳動科技(バイトダンス)株の評価益も計上する見込みだ。

  バイトダンスの評価額は2500億ドルに上り、関係者によれば、株式の取得は企業価値が630億ドルと750億ドルの時に行われたという。

バイトダンスの企業価値を27.5兆円超と評価、未公開株取引で-関係者

  ユナイテッド・ファースト・パートナーズのアジア調査責任者を務めるジャスティン・タン氏は、「マーケットはビジョン・ファンドのこれまでの投資戦略や結果をとても評価し、好意的だ」と分析。「明らかに世の中にはまだまだ資金があふれている」とし、IPOにとっては好環境だと述べた。

グリーンシル関連は損失に

  一方、ビジョン・ファンド事業では損失の計上も見込まれている。3月に金融ベンチャーのグリーンシル・キャピタルが英国で再建型倒産手続きを申請したことに関連し、5億ドルを減損する見通し。ホテル事業を運営するインドのOYO(オヨ)の企業価値も減少する。

  孫社長は2月の決算会見で、ソフトバンクGは将来有望な人工知能(AI)革命企業を発掘し、成長させることに特化した「金の卵の製造業だ」と発言。投資先企業について「年間20社くらいのリズム感で上場させたい」と意欲を示していた。

  グラブは特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じ、340億ドル以上の企業価値で米国に上場する予定。滴滴も700億ドルから1000億ドルの価値を持つ企業として米国でのIPOを準備している。ユナイテッド・ファースト・パートナーズのタン氏は、「風はしばらくの間、孫氏の背中を推し続けるだろう」と話した。

ソフバンクG出資の滴滴、非公開での米IPOを申請-関係者

SoftBank CEO Masayoshi Son Presents Third-Quarter Results

ビジョン・ファンド投資先と孫社長

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

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