萎縮する中国ハイテク富豪、締め付け強化で「自由な時代」終焉
Blake Schmidt、Coco Liu、Venus Feng-
今年上期、中国人富豪の資産は計160億ドル縮小-株価下落が直撃
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中国ハイテク業界は「根底から変わる」-PE投資会社CEO
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中国の富豪が自由に稼ぐことができた時代は今、突然の終わりを迎えているようにみえる。2021年上期は世界長者番付上位10人の純資産が2090億ドル(約23兆円)増えた一方、ブルームバーグ・ビリオネア指数では中国人の富豪の資産は計160億ドル縮小した。
こうした現象の背景には、今年1-6月に中国株式相場全体が上昇する中で、同国富豪が持つ主要企業の株式が平均13%下落したことがある。配車サービスの滴滴グローバルは6月30日にニューヨーク証券取引所に上場して以降、株価が14%下落。共同創業者らの資産は約8億ドル減少した。
中国では、昨年11月にアリババグループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏がフィンテック企業アント・グループの超大型新規株式公開(IPO)中止を余儀なくされて以降、ハイテク企業への締め付けが強まる一方だ。同国当局は金融サービスやインターネットプラットフォーム、そして多くの同国大手企業を支えるデータなど、自国経済の最も重要な側面に対する規制を強化している。10日には、国外上場を目指すほぼ全ての企業に対し、サイバーセキュリティー審査を受けるよう義務付ける新たなルールを提案した。
中国政府が締め付けを強める動機はさまざまだが、その底流には、経済に大きな影響力を持つようになった富豪の力を抑えたいとの意向が見え隠れする。指導部の考えに詳しい当局者によると、中国政府は自国の富豪が韓国財閥のように経済や政治に強い力を及ぼすのを防ぎたいと考えている。
これは、中国の富豪と彼らを支援する投資家にとって新たな時代の到来を意味する。馬氏のような大富豪が臆することなくルールを曲げ、自分たちの企業の成長を促進し、国有銀行など既得権益層に挑戦できた時代は終わった。公の場で目立つことはこれまで、ハイテク企業の創業者にとっては財産のように考えられてきた。しかし今や、それは負債のようにみえる。
中国政府が美団の創業者に目立つなと警告、先月の唐詩投稿後-関係者
アントのIPOが突然中止となる直前のスピーチで金融規制当局を批判していた馬氏だが、それ以降はあまり公の場に姿を見せず、言動も控えめになっている。
中国の電子商取引会社、拼多多(ピンドゥオドゥオ)の共同創業者である黄崢氏は最高経営責任者(CEO)職の他、会長職からも退き、多額の株式を寄付した。動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」を運営する北京字節跳動科技(バイトダンス)の創業者、張一鳴氏は5月、CEOを退任して教育関連の慈善活動に費やす時間を増やす意向を明らかにした。
ロサンゼルスのプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社ペイトリアーク・オーガニゼーションのエリック・シファーCEOは、こうした新たな潮流により、投資家は中国政府と衝突する恐れのある起業家への投資には一段と慎重になると指摘。中国のハイテク業界は「根底から変わる」ことになると語った。
参考記事 |
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原題:
The World’s Billionaire Factory Shudders as China Cracks Down(抜粋)