日本株に政治リスクの影、緊急事態宣言下の五輪-上値追い秋以降
間一生-
都議選も自民苦戦、政権の求心力低下は必至-三菱モルガン・藤戸氏
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追加経済対策や衆院選の結果次第で株価押し上げの可能性も
日本株に政治リスクが影を落とし始めた。新型コロナウイルスの感染拡大で東京都には緊急事態宣言が発せられ、五輪は主要競技の無観客開催が決まった。経済正常化が遅れればさらに政治リスクへとつながる恐れもあり、日本株にとっては重しとの見方が出始めた。
現政権の求心力低下は必至で、日本株の世界株に対する出遅れが改善されるのは秋以降になるーー。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤戸則弘チーフ投資ストラテジストはこう指摘する。東京都議会選挙で自民党が過去2番目に少ない議席数となったことや4度目となる緊急事態再宣言を機に、安倍政権下では無縁だった政治リスクが株式市場で意識され始めていると話す。
ピクテ投信投資顧問の松元浩常務も「衆院選を控える中で、都議会選で過半議席を獲得できなかった与党の指導力の弱さが政治リスクとして意識されている」と指摘する。
日本の感染者数は欧米諸国に比べて少ないが、株式相場の上昇率は今年、先進国市場の中で最も低い部類に入る。日経平均株価とTOPIX(東証株価指数)は都議会選の翌日から始まった先週、約2カ月ぶりの下落幅を記録した。特に日経平均は9日に年初来高値から10%超下落して調整相場入りし、前週末に主要3指数がそろって最高値を更新した米国株式市場とは対照的な動きとなった。
国内コロナ感染者は11日、5日連続で2000人超えとなった。東京都が12日からの4度目の緊急事態宣言に入ったことで、7-9月期の経済成長は全く期待できないとの声もある。ワクチン接種が進む英国や米国などでもデルタ変異株が広がっている中での五輪開催が一段の感染拡大を招く懸念もくすぶる。
藤戸氏は政府が防疫体制を楽観視していたことは否定できないと言う。二転三転した五輪の運営方針やワクチン接種の遅れと供給面での混乱については今後与党内外から批判の声が出てくる可能性があり、経済支援策などを含む今後の政策運営にも悪影響が出かねないという。
もっとも、衆院選挙はコロナ感染拡大を抑えて与党が勝利すれば株価押し上げ要因にもなりうる。2017年の前回衆院選では自民党・公明党合わせて3分の2を超える議席を獲得して圧勝、日経平均は投開票日の翌日から3カ月で11%上昇した。先週の下落の反動で週明け12日の株式相場は大幅反発するも日経平均の午前終値は2万8581円と、年初来高値の3万円台にはほど遠い。
政府が追加経済対策を策定すれば相場を押し上げる可能性もあるが、先行き不透明感が高まる中で中期的に上値が重い相場はしばらく続くとの見方が根強い。
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