バイオジェンのアデュカヌマブ、米主要医療センターが投与しない方針
Cristin Flanagan-
株価は6月4日以来の安値、昨年11月9日以来の大幅安
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ブルークロス・ブルーシールドの一部傘下団体は保険でカバーせず
15日の米株式市場でバイオジェンの株価は約1カ月半ぶりの安値を付けた。同社とエーザイが共同開発したアルツハイマー病治療薬について、2つの米主要医療センターが当面投与しないことを決めた。また、非営利医療保険連合ブルークロス・ブルーシールドの傘下団体の一部は保険でカバーしない方針だと伝えられた。
バイオジェン株は6.8%の328.16ドルで終了。6月4日以来の安値、昨年11月9日以来の大幅安となった。クリーブランド・クリニックとニューヨーク市のマウントサイナイ・ヘルス・システムが「アデュヘルム(一般名アデュカヌマブ)」を使用しない計画だと伝えられた。米食品医薬品局(FDA)は6日7日、諮問委員会が前向きな評価を与えなかったにもかかわらずアデュカヌマブを承認した。
アデュカヌマブはピーク時の売り上げが年90億ドル(約9880億円)に達すると見積もられてきたが、他の医療機関も追随すれば、この見通しは危うくなると、みずほ証券のアナリスト、サリム・サイード氏は指摘した。
クリーブランド・クリニックは、専門家パネルによる試験結果の検討の結果、アデュカヌマブを同クリニックのフォーミュラリー(継続的にアップデートされる処方薬リストと関連情報)への追加を見送った。「安全性と有効性に関する現在のデータに基づき、アデュカヌマブを現時点では入れないことを決めた」と電子メールで配布した資料で説明。ただ、追加データが提供されれば再検討はあり得るとしている。
クリーブランド・クリニックの各施設では投与しないが、個々の医師が処方することはあり得る。
マウントサイナイ・ヘルス・システムは、アデュカヌマブ承認前のバイオジェンとFDAスタッフとの間のやり取りに関する政府の調査が完了するまで投与しない。この問題では米議員も調査している。
バイオジェンに米下院委が資料提出要請、アルツハイマー病治療薬巡り
マウントサイナイは「アデュヘルムのFDA承認に対しては、臨床医や患者、介護者から深刻な懸念と疑問が寄せられており、慎重なアプローチを要する」と発表資料で説明した。
マウントサイナイとクリーブランド・クリニックがアデュカヌマブを使用しない決定はニューヨーク・タイムズ紙が14日に先に報じていた。それより先に、ブルークロス・ブルーシールドに属する団体の一部はアデュカヌマブを保険でカバーしない方針だと伝えられていた。
米最大の医療保険会社ユナイテッドヘルス・グループの幹部は15日の決算に関する電話会見で、保険適用を巡っては引き続き検討を行っていると述べた。
アデュカヌマブについては、メディケア(高齢者・障害者向け公的医療保険)がどのようにカバーするかも不明。投与には年5万6000ドルの費用がかかる。
バイオジェンは「医学的決定は科学とデータに基づくべきであり、アルツハイマー病患者が一部の施設でアデュカヌマブにアクセスできない可能性が伝えられたことには失望している」と資料でコメントした。同社の株価は6月初旬の高値から約20%下落している。
原題:Biogen Losing Alzheimer Drug Gains After Providers Push Back (1)