多様性と調和をうたった東京五輪、報奨金に見えるオリパラの格差
水田知佳-
米国は東京大会で初めてオリパラのメダリストに平等な報奨金を支給
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各国の資金問題が平等性の実現阻む-日本は16年以降、金メダルに差
東京五輪から2週間後の24日に開幕するパラリンピック。選手の多くは、オリンピックで表彰台に上った選手よりも少ない報奨金を手にすることになり、平等性を促進する大会の理念に反することとなる。
主要国の中でも、オーストラリアとカナダでは、オリンピックのメダリストに報奨金が支給されているが、パラリンピックでは対象外だ。開催国の日本では、パラリンピックの金メダリストへの報奨金の金額は200万円少ない。
今回のオリンピックは、「みんなの輝き、つなげていこう。」(英語ではUnity in Diversity)をメッセージに掲げ、初のトランスジェンダーを公表した女性選手の参加など、平等性や多様性に関するさまざまなテーマに光が当てられた。しかし、パラリンピックでは資金面で平等性に課題が残る。
オリンピック金メダリストの報奨金 | パラリンピック金メダリストの報奨金 | |
---|---|---|
日本 | $45,600 | $27,400 |
カナダ | $15,900 | $0 |
オーストラリア | $14,500 | $0 |
フランス | $76,200 | $76,200 |
米国 | $37,500 | $37,500 |
イギリス | $0 | $0 |
(注:米国外の値は、2021年8月18日のレートでドルに換算し100の位で四捨五入)
パラリンピックでは、世界各国から約4400人の選手が参加し、車いすテニス、アーチェリー、ゴールボールなど22の競技で競い合う。日本政府と主催者は、新型コロナウイルス感染の急拡大を受け、13日間にわたって開催される大会のほとんどの競技を無観客で行うとしている。
各国のパラリンピック委員会によると、メダルを獲得した選手の報奨金は、オリンピック選手に比べて数千ドルの金額差が生じることもあるという。
この格差を埋めるために、長年にわたりいくつかの働き掛けが行われてきた。フランスのパラリンピック・スポーツ委員会の担当者によると、同国では2008年以降、パラリンピックとオリンピックのメダリストに同額の報奨金が支給されている。また、東京大会は、米国のパラリンピックメダリストが、オリンピックと同額の3万7500ドルの賞金を受け取る初めての大会となる。
過去に8個のメダルを獲得した米国のパラサイクリング代表のオクサナ・マスターズ選手は、18年に米オリンピック・パラリンピック委員会が両大会のメダルの価値を同じにするという決定を発表した際、涙を流して喜んだ。東京大会にも出場する。
カナダ・パラリンピック委員会の担当者は、財政的な問題からメダリストに賞金を与えることは難しいが、将来的には支給が実現できるよう努力するという考えを支持しているとメールで回答した。
開催国の日本の場合、パラリンピックの報奨金は08年の北京大会から支給され、16年のリオデジャネイロ大会まで、オリンピックのメダリストと同額だった。しかし、日本オリンピック委員会(JOC)が同年に金メダルの賞金額を引き上げたことで格差が生じ、平等化に進む他国の流れから逆行することとなった。
日本障がい者スポーツ協会(JPSA)の石田和彦事務局長は、「オリンピックメダリストの報奨金に近づけるよう、これまで順次金額を引き上げてきた」が、「現在のところ差額を埋める」予定はないと語った。石田氏は、JOCに追随しない理由について、「金メダルを特段重視することなく、金、銀、銅のバランスを考慮した報奨金の額としている」と説明した。
国際オリンピック委員会(IOC)の広報担当者は、アスリートに報酬を与えるかどうかは、各国のオリンピック委員会の判断に委ねられているとメールでコメントし、報奨金の差額については見解を示さなかった。
しかし、すべてのパラリンピック選手が報奨金の金額を問題視しているわけではない。過去5回の出場経験を持ち、東京大会に出場予定のパラリンピック高跳び日本代表の鈴木徹選手は、日本のパラリンピック選手は、政府やJPSAやスポンサーなどから義足や合宿、医療費などで「十分な支援を受けている」と指摘。「報奨金が高いに越したことはないが、多くの選手がおまけ」として捉えており、「世界一、最高の演技、ライバルに勝つ」という、それ以上の価値を求めていると語った。