中国投資好調なＵＢＳヘッジファンド部門、顧客に新たな仕組み提供も

投資先としての中国の可能性に疑問を投げ掛ける当局による相次ぐ締め付けを切り抜けたＵＢＳグループのヘッジファンド部門は、自社の中国戦略に投資家が直接アクセスできるようにすることを検討している。

　　ＵＢＳオコナー（運用資産96億ドル＝１兆500億円）のケビン・ラッセル最高投資責任者（ＣＩＯ、ニューヨーク在勤）は中国戦略に関して、今年に入って２桁のリターンを記録しており、７月と８月は共に「非常に良好」だったと指摘。規制上の制約を理由に詳細な運用成績には言及せず、別の中国ファンドを設定するかどうかも語らなかった。

　　顧客は現時点で、ＵＢＳオコナーの32億ドルのマルチ戦略投資ファンドを通じてのみ中国戦略にアクセスできる。強気と弱気の投資を組み合わせたファンドで総資産に占める中国の比率は13％。

　　ラッセル氏は電話インタビューで「世界の投資家は中国を引き続きアンダーウエートにしている」とした上で、「彼らは成長や流動性の観点から非常に魅力的だとして中国への投資が必要だとの考えを変えていないが、中国投資についてより安全で手堅い方法を探っている」と語った。 

　　オコナーのマルチ戦略ファンドの総資産に占める中国の比率は１月時点の12％から今年最高の水準に上昇。中国投資の半分は中国本土に上場するクラスＡ株。従来は中国の投資比率を18％に引き上げる計画だったが、海外投資家が借りるためのクラスＡ株の入手しやすさが予想ほど進まなかったことで実現できなかったと、ラッセル氏は説明した。

　　オコナーは消費者情報の活用・収益化に対する規制強化の兆しを受け、2020年10－12月（第４四半期）に中国大型ハイテク株の圧縮・売却を開始。今年春の早い時期までにこうした銘柄をアンダーウエートまたはショート（売り持ち）にした。

　　中国指導部が育児・教育費を社会的問題の一つに挙げたことから、放課後にサービスを提供する教育関連会社について今年からショートにしていることも、かなりうまみのある取引になっていると、ラッセル氏は述べた。価格統制や規制強化の可能性を踏まえ、中国の酒造メーカーの下落を見込んだ投資も手掛けている。

　　同氏によれば、半導体や電池原料、電気自動車（ＥＶ）、新エネルギーのインフラに対する強気の投資も順調だ。自給自足の技術サプライチェーン構築を目指す中国の動きや二酸化炭素（ＣＯ２）の排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルへのコミットメント、新型コロナウイルス感染拡大からの景気回復、割安株への投資家のシフトが追い風となった。

　　オコナーは現在、予想より厳しい規制が織り込まれた中国の一部ハイテク株を押し目買いしている。

　　ラッセル氏は「中国はあまりにも異質で、あまりにも理解し難いと考える投資家は多い」とした上で、「われわれはあらゆる業界に規制強化が広がるドミノ効果は予想していない」と語った。

原題：
UBS Hedge Fund May Offer Clients Direct Access to China Strategy（抜粋）