アップル、年間数十億ドル失う恐れ-アプリ市場運営巡る地裁判断で
Mark Gurman-
アップストア内の全てのアプリは手数料支払い回避が可能と判事
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ゲームのアプリはアップストアの総収入の約70%を占める
アップルは2008年に導入したアプリ市場「アップストア」のビジネスモデルについて、これまでで最も重要な見直しを米連邦地裁に命じられた。これに伴い同社は年間数十億ドルを失う可能性がある。
カリフォルニア州北部地区連邦地裁のイボンヌ・ゴンザレス・ロジャーズ判事は10日、アップルはアプリ取引について、手数料を回避する選択肢を開発業者に与える必要があるとの判断を下した。すなわち最大30%の手数料カットだ。基本ソフト「iOS」用アプリに「ボタンや外部リンク」などを通じ、消費者をアップルの課金システム以外の購入手段に誘導することを容認するものだ。
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今回の裁判所判断はアップルにとって打撃だが、時価総額が世界最大の同社は吸収できる可能性が高い。アップルは連邦法や州法で独占企業と認定される可能性もあったが、そうしたさらに大きいリスクも回避した。
10日の株価終値は3.3%安の148.97ドルと、5月4日以来の下落率を記録し、時価総額は約850億ドル(約9兆3400億円)吹き飛んだ。ただ、一部の投資家は裁判所判断を冷静に受け止めた可能性もある。
米国では昨年、アップストアの手数料収入が推定63億ドルで、その大半がアプリ内の購入やサブスクリプションだった。ゲームや他のアプリがアップルの課金システム外に消費者を誘導する方向に備える中で、こうした資金が得られなくなる恐れがある。
アップルがどれほどの手数料を失うかは、同社の課金システム回避を目指す開発業者の数に左右される。アップルを長年分析してきたループ・ベンチャーズのジーン・マンスター氏は新しい方針を利用する開発業者の数にもよるが、10億-40億ドルと予想している。
判決文によると、ゲームのアプリはアップストアの総収入の約70%を占める。調査会社センサー・タワーの推計によれば、アップルは20年に米国でゲームから約38億ドルの収入を得ており、その大半がアプリ内での取引によるものだ。
ただ21年度だけ見ても、アップルの売上高は推定3600億ドル超に上り、今回の判断は業績全体に影響が及ぶことはないとみられる。また、多くの開発業者は自社ウェブ上の決済プラットフォームを構築しないで済むようにアップルの課金システムを利用し続ける可能性もある。
原題:Apple Risks Losing Billions of Dollars Annually From Ruling (1) 、 Apple Loses $85 Billion in Value After App Store Ruling (1)(抜粋)