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来年の新興国通貨、中国人民元が左右か-金融政策の相違でリスクも

  • ブラジルやインドなど新興国通貨との正の相関強まる人民元
  • 名目ドルベースでの世界GDP、中国シェアは20年時点で17%

中国人民元が他の新興国通貨にこれまで以上に大きな影響を与えるようになっている。来年の新興国通貨を左右するのは人民元かもしれない。

  ブルームバーグのデータによれば、人民元とMSCI新興市場通貨指数の相関係数は週間ベースで9月に過去最高に達した。こうした強い正の相関関係は人民元の大きなウエートも一因だが、元とブラジル・レアルの連動性が少なくとも2008年以来の高水準になったことも影響している。インド・ルピーとの相関関係も3年ぶりの強さだ。

  世界における人民元の影響力増大は、中国が世界経済と結び付きを深めている新たな兆しだ。米国債の代替として中国国債に引き付けられる投資家も増えており、ドルとユーロ、円と共に人民元もグローバル準備通貨の仲間入りを果たすと予想する銀行もある。だが人民元の潜在力を打ち消しているのが、中国自らによる不透明な政策決定や規制を通じた締め付けだ。人民元に近づき過ぎると、しっぺ返しを食らう恐れもある。

Correlation between yuan, MSCI EMFX Index rose to record this year
 
 

  「中国は新興国市場の安定や成長見通しにとって極めて重要な要因になろうとしている」とPGIMのプリンシパルエコノミスト、マグダレナ・ポーラン氏(ロンドン在勤)は指摘。「中国からの輸出に依然として大きく依存している中南米やアジア、南アフリカなどの国にとって、成長を安定させるという中国当局の意思は非常に重要だ」と述べた。

  ブルームバーグがまとめたデータによると、人民元とMSCI指数構成通貨の相関係数は10年末の0.24から今年9月には週間ベースで0.81に上昇。今月23日は0.72だった。相関係数の1は全く同じ動きを示す。

下振れリスク

  もちろんこうした相関性は、人民元が下落し始めれば、他通貨を押し下げる可能性を意味する。22年は米国や英国、オーストラリアの中央銀行が引き締めに動くと見込まれる中で、中国人民銀行は金融緩和を進めると予想されており、政策の開きが大きなリスクを生みつつあるようにも見える。

  米連邦準備制度が利上げを開始すれば、人民元は特に大きな課題に直面することになる。米利上げがドル高を招き、新興国からの資金流出につながり得るからだ。人民元はそれでも今のところ、国内外の金融政策に対し相対的な強靱(きょうじん)さを示している。

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  JPモルガン・プライベート・バンクによれば、中国経済はここ10年で世界の成長に一段と大きな影響を及ぼすようになると同時に、新興国市場にとっても極めて重要な存在になっている。世界銀行のデータに基づくブルームバーグの算出では、名目ドルベースでの世界の国内総生産(GDP)における中国のシェアは、20年時点で17%と、10年前の8%から倍以上に拡大している。

Low Volatility

Yuan's volatility is among the lowest in emerging market currencies

Bloomberg

原題:China’s Yuan Is Propelling Emerging Currencies Like Never Before (抜粋)

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