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コロナ禍で広がる「内向き志向」、外国人労働者受け入れ政策に波及も

  • 住民投票参加騒動や入国停止措置で外国人労働者受け入れ後退の懸念
  • 一連の出来事で、政府が目指す国際金融都市構想にも打撃の恐れ
A worker wearing a protective mask assists travelers arriving at Narita airport near Tokyo in November.
A worker wearing a protective mask assists travelers arriving at Narita airport near Tokyo in November. Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

外国人の新規入国停止への広範な支持から東京都武蔵野市が検討していた外国人に住民投票への参加を認める条例案への反対キャンペーンまで、コロナ禍の日本では外国人を敬遠する内向き志向が広がりつつあるとの懸念が強まっている。

  「中国からすれば格好の的。やろうと思えば、15万人の武蔵野市の過半数の8万人の中国人を日本国内から転居させることも可能。行政や議会も選挙で牛耳られる」。自民党の佐藤正久外交部会長(元外務副大臣)は11月、武蔵野市の条例案に反対する意見を自身のツイッターに投稿した。保守系議員グループも懸念を表明し、条例案は12月21日の議会本会議で否決された。

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Photographer: Agencia Makro/Getty Images South America

  同時期に世界では新型コロナウイルスのオミクロン変異株の感染が拡大。岸田文雄首相は11月下旬、外国人の新規入国を原則停止するなど厳しい水際対策に踏み切った。

  これとは別に在日米国大使館は12月6日、日本の警察から外国人が職務質問や取り調べなど人種差別的な扱いを受けたとみられる「レイシャル・プロファイリング」事案が発生しているとする異例の警告を発した。

  コロナ禍を契機とした入国規制や経済的打撃が3年目を迎えようとしている中で、これら一連の出来事は、外国人労働者受け入れ拡大に対する日本の政策が再び後退するのではないかとの懸念が広がりつつある。水際対策の強化を巡っては、12月にNHKが実施した世論調査で、評価する人が「大いに」「ある程度」を合わせて8割を超えた。政府は「レイシャル・プロファイリング」について否定している。

  上智大学の中野晃一教授は、パンデミックが外国人嫌いの気持ちをあおるのは日本だけの現象ではないと指摘する。その上で、コロナ禍の前から、国内問題から国民の目をそらすためにナショナリズムを利用する政治家はいたが、昨年来、入国停止といった度を越えて非科学的で非人道的な水際対策が行われてきているとの見方を示した。

  日本は長く移民に慎重な国として知られたが、近年は少子高齢化の進展する中で外国人労働者の受け入れを拡大する政策にかじを切り、建設やサービス業などを中心に2020年までの7年間で倍以上増えていたが新規入国停止で人手不足に再び悩まされることになる。政府が目指す国際金融都市構想にも打撃となりそうだ。

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